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心理学部教員インタビュー(7):馬場 存 教授 Part2

2020/12/18教員情報

 人気企画「教員インタビュー」では、心理学部専任教員からのメッセージをお届けします。前回に引き続き,精神病理学や音楽療法を専門に研究・臨床活動をされている馬場教授にお話を伺いました。今回は、馬場先生が作曲・演奏をされているピアノ曲が聴けるコンテンツも一緒にお届けします!


「心理学部教員インタビュー(7):馬場 存 教授 Part1」の続きです。

<研究をされてきて、これまでにわかってきたことはありますか?>
 僕がその分野を代表するような話ではないので、僕が言うような立場ではないと思いますけど、自分のやっている中でということであれば...。これまで、患者さんの経過とか、どんな曲のどんな音に反応するとか、失敗は成功の元で、意図しない音を出してしまったときにどう混乱していたとか、そういうことを調べていって、音楽理論と精神疾患の特性とがどういう風に繋がっているのかなどを研究してきました。

 その中でわかってきたこと...というよりは仮説として考えられることという位置づけになるんですけど...。まず、「ドミソ」の音で緊張が解決されるっていうのは古典的な音楽理論の一つで、「調(キー)の決まっている音楽は、和音進行により緊張がほぐれる」という構造があるんですよ。その点と患者さんの根底にある緊張を解くっていうことがどうも繋がっているようだ、という理論です。すごい乱暴にいえば、「ソシレ」から「ドミソ」に和音が変化することを、それぞれの患者さんにとって適切な、かつ伝わりやすい形で提示する。あくまで患者さんがそれを楽しめる形で。それを繰り返していくと、統合失調症の方が根底に抱えているすごい恐怖とか緊張が解けていって、縮こまっていなくてもいられるように変化していくようだ、という仮説が立てられる。そして、その点を頭に入れて音楽療法をやることで効果があがるだろう、というような考察を論文などで書いています。

 もちろん、こうした考察をする際は、統合失調症の症状の構造(精神病理)を踏まえながら理論構築をしています。理論構築というのは、真実を見出すっていうことなんです。役に立つことじゃなければやっぱり意味がない。「何が起きているだろう」、という謎に対して謙虚に、心を無にしてじっと受け止めていったときにみえてくるものをちゃんと説明できるような理論が必ずあるんですね。大昔からいろんな人が患者さんを診ていろんなことを考え、それぞれの理論を構築してきました。その中に、今自分の目の前にある謎に対するヒントがあって、複数の理論を組み合わせると「ああ、そういうことなんだ」っていう一つの仮説がみえてくる、そういうことをやっていますね。

<どんな大学生活を過ごしていましたか?>
 医学部に入ってからは真面目に勉強していました。だけど、3年生の時に作曲の仕事が来たんです。一旦音楽を諦めたので、またやっていいものかとか、大学を入り直してまた大学をやめます、なんていうのは絶対ありえないわけだから、勉強と両立できるだろうかとか随分悩みましたけど、「人生一回しかないから、両方来たのなら、どちらもやろう」と思って、15分くらいで1曲作ったんですよ。それを作ったら今度は制作会社の人が喜んでくれて、いい曲を作る人がいるから会いたいと言われて、そこからラジオやテレビのBGMの仕事をするようになったんですね。他にも、駅のディスプレイのBGMやスポーツクラブ、コンビニなどで流れるような音楽を作曲・演奏していました。テレビをつけたら自分の曲が流れていたりとか、そういう仕事を並行してやっていました。そこから段々と音楽の仕事は大学の夏休みだとか冬休みを使って、という生活になり、その後ピアノソロのCDもリリースするようになりました。
 最初は「2回目の大学だから、いい成績を取らないと...」と思っていましたけど、その頃から「真ん中よりちょっと上の順位にしよう」と思うようになりました(笑)。「2回目だから恥ずかしいし、トップクラスを取らないと」と思っていたんですけど、ちょっと考え方を変えて、残ったエネルギーを音楽活動に向けようと思っていました。

20201120sinri_03.pngCD:KICS-3801(左)CD:KICS-3802(右)
2019年にリリースされた2枚のCD(キングレコード)

<高校生へのメッセージをお願いします>
 個人的な印象ですけど...あと高校生の方と接点がそんなにあるわけじゃないのでハズれてるかもしれませんが、そういう前提で(笑)。我々の頃っていうのはもう何十年も前だけど、かなり自由な時代でしたね。いい意味でも悪い意味でも自由だった。学校に行かないような人もいれば、好き勝手している人もいれば、真面目に勉強している人もいる。今はなんとなく「きちんとしないと」っていうのが先に来る時代なんだろうなぁ、という想像をします。大学でこんなに出席取るなんていうのは、我々の大学時代では考えられなかった。大学行って「この先生の授業、90分聴いているぐらいだったら30分自分で勉強した方が早いな」と思ったら授業出なかったですから。時間もったいないや、と思って(笑)。今は許されないでしょう。高校生などでも似たような現象が起きてるだろうなぁと。ただ、授業をサボって自分でやったほうが早いとか、そういうことはあんまりやらないほうがいいので、そういう意味ではいい世の中だと思います。

 それでも、与えられたものをこなすばかりとか、答えが先に用意されている前提で勉強する、というような雰囲気がもしかしたらあるのかなっていう心配はあります。人間の創造性というか、クリエイティビティというか、そういうのはもっと自由なところから生まれるので、答えが最初からあるとはあんまり思わない方がいい。「自分は何がやりたいのか」とか、高校生の段階では早いかもしれないけど「死ぬまでに何をやっておかないと後悔するか」とか「本当に大事なことって何かな」とか、そういうことを考える癖をどっかでつけといたほうがいいんじゃないかなと思いますね。

 今は情報が山のようにあるでしょう。なくてもいいような情報がたくさんあるんですよ。同じようなことをちょっと表現変えて、ネット上のアクセスを増やして広告料を稼ぐためにいろいろ書いているようなのとか、どうでもいいことを重要っぽく見せている情報とかが山のようにあるので。無駄な情報がどれで、本当に意味があるものはどれだとか、そういう視点があったほうがいいような気がしますね。そういう点でいくと、「人と比べてどうこう...」っていうのはあんまり考えてもしょうがないんですね。周りが他人のことをぐちゃぐちゃ言う方がくだらないので、そんな奴はほっときゃいいっていうぐらいの気持ちでいいと思うんです。

 そうなるためには、いい本を読むとか、古典を大事にするっていうことかな。名作と呼ばれている本とかはやっぱり読んでおいたほうがいいし、古典的な音楽も聴いておいたほうがいい。まとめると、風雪に耐えているものに目を向けること。百年、二百年残っているものは絶対に意味があって、普遍性があって、それには本当に大事なことが入っているはずだから、そういうものに目を向けていけるとよいと思います。目の前にあるこなさなきゃいけないことをやるのももちろん必要でしょうけど、それと同時に、何百年も変わらないもので大事なものがあるはずなので、そういうものも意識しておく。不要な情報に振り回されず、古典的なもの、風雪に耐えているもの、そういうものから本物を見抜く目が養われると思います。


◆馬場存教授の作曲・ピアノ演奏によるCD『精神科医・音楽療法士が奏でる 心をほぐす 癒やしのピアノサプリ』(2019年リリース、キングレコードKICS-3802)に収められている曲、'sea air〜優しい光と静かな海〜' を本学公式YouTubeにて配信中です!是非お聴きください。

20201120sinri_04.png画像をクリックするとYouTube(3月1日renewal版)に接続されます。

◆教員プロフィールを詳しく知りたい方はこちらへ↓
教員情報
https://faculty.surugadai.ac.jp/sudhp/KgApp?kyoinId=ymisgyogggy



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