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心理学部教員インタビュー(7):馬場 存 教授 Part1

2020/12/14教員情報

 人気企画「教員インタビュー」では、心理学部専任教員からのメッセージをお届けします。本企画でインタビュアーを務めてくれるのは、心理学部および心理学研究科に所属する学生たちです。授業中に見せる『教員の顔』とはまた別の、各教員の「研究者の顔」「一個人としての顔」を紹介していきます。


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<現在の研究テーマ、専門分野を教えてください>
 テーマとしては、「精神疾患に対する音楽療法の精神病理学的研究」とでもいえばいいですかね。僕は精神病理学、精神症候学の立場から、症状がどうなっていくのか観察をして、一つ一つ理論的に過去の文献や色んな知見と総合しつつ、何が起きているのかを考えていくという分野を専門にしています。また、音楽心理学という分野も踏まえながら音楽学的なこと、たとえば、和声がどうなっているかとか、和音がどう動くと心がどう動くかとか、それがこういう精神疾患のある人から見るとどう感じられるのかとか、そういうことを考えて、どうしてよくなるのか、どうしたら効果があがるのかなど...そういったことを研究しています。

 なんとなくのイメージはつくかもしれませんが、精神科というのはレントゲンでわかるとか、血液検査でわかるといった世界ではないので、ある意味どうにでも解釈できてしまう危険性があります。医師になって臨床に入ったら、よくわからないまま進んでいるような雰囲気があるなあと思って、これはいけないと。もっとちゃんと患者さんを前にして、何が起きていて、それはどうしてなのか、それをよくするにはどこをどう治療していけばいいのか、ある程度きちんと説明できるようにしていかないと臨床はできないと感じました。
 症状や病気について、何がどうなっているのか、まだまだわからないことが精神医学にはたくさんあって、そういうことを考えるのが、「精神病理学」という学問です。その中のさらに一つに「精神症候学」というものがあって、授業では、その分野に近い話をしています。だから研究テーマは広くいうと精神病理学、もっというと精神症候学ということになりますね。それと精神科の音楽療法です。

20201120sinri_02.png音楽・音楽療法・精神医学について書かれた2018年発刊の著書

<現在の専門分野を目指した理由、きっかけは何ですか?>
 自分の周りにはわりと医者関係の職についている人が多かったので、逆に医者以外の世界を見たい、もっと違う世界の人に会いたい、そして自分が何をやって生きていくのかを見つけたいと思い、東京の国立総合大学の医学部以外に行こうと思ったんですね。で、そうすると東大ぐらいしかないんです。だから東大に行こうと思って勉強して理科1類に入りました。物理や数学が好きだったので。勉強も好きだったし、高校時代からバンドもたくさんやっていたし、スポーツも好きだったし、絵を描いたりするのも好きで、いろいろな好きなことがあったので、入学してからは、自分が何をし始めるのかを観察しました。勉強するのが好きなら勉強をするだろう、などと思っていたら、バンド活動にのめり込んで。ジャズピアノを弾くようになり、自分のオリジナル曲で全く知らない人たちが感動したりとか、ライブハウスでみんな一体になって別世界になるとか、目の前でお客さんが涙するとか、そういう経験があって、これはもう音楽をやろうと思ったんですね。それでバンドばかり組んで、ライブハウスもあちこち回って、カフェのピアノ弾きのバイトもしたりして学校行かなくなっちゃったんですよね。だから絶対にマネしちゃいけないわけです(笑)。 

 人の心をいい方向へガンッと変えるのが音楽だと思ってたんですね。目の前でこれだけ人が幸せになっていくわけですから。あと、音楽は敗者がいないんですね。こっちが頑張れば頑張るほど、みんな幸せになるから、こんないいものはないと思いました。でも、レコード会社にデモテープを送ったり、色々やったんですけど、なかなか芽が出なくて。音楽でそれができないのだったら、人の心をとにかく幸せにするとか、いい方に向けるっていうことがやりたいと思った。それと、精神科医になりたいという親友がいたり、家のこともあって...。「やり直して医者になる」っていうと説明がしやすいんです(笑)。それで、 慶應の医学部に入り直しました。

 当時、指導をしてくださった先生が音楽やら文学やら建築やら何についても博識で、「あなたなら音楽に関する研究が向いているだろう」と言われ、幻聴の研究をすることになりました。音楽の幻聴のある患者さんを診察し、一人一人にお話を伺って、この症状は一体なんなのか、どういった臨床的な意義があるのかを研究していたのが大学院の頃です。
 その後、音楽の幻聴の研究もある程度固まってきて、じゃあ次にどう広めようかなって思っていたときに、同じ医局で、医者になってから東京芸大に進み、その後音楽療法をやっている先輩のところに行って、実際に音楽療法を見せてもらって...「なるほど、人間には音楽が必要なんだ、これだ!」と思いました。自分は、一通りは音楽が出来るのと、精神医学も身についてきて、これは臨床として音楽療法をやると自分にしかできないこともあるだろうと考えました。通常の臨床と共に、患者さんにとって音楽を使ってよりいい治療効果を上げるにはどうしたらいいか、ということに並行して興味を持つようになったのです。

 主に統合失調症の患者さんが対象なのですが、精神科病院で入院していてもよくならない人がたくさんいて、薬の効きも悪く、他の治療法もあまり効かないことがあるという現状がありました。でも、音楽療法をやってみると確かによくなる人が確実にいるんですよ。集団でやる場合もあれば、個人でやる場合もあるのですが、やっていくうちにこっちがびっくりするぐらいよくなる人がいて、でもなぜよくなるか全然わからないわけなんですよ。精神医学、特に精神症候学をある程身につけた身としては、実際に音楽療法をやりながら患者さんと臨床を積み重ねる中で、なぜよくなるのかを研究し、そのメカニズムがわかったら、「もっとこうすればいいんじゃないか」という新しい方向性を探る、それをやるのが自分の役目かなと思いました。

 駿河台大学に来る前は、音楽大学の教員をしていました。今は、音大は非常勤になりましたが、おそらく、精神科医で学会認定の音楽療法士で、かつ音大の専任教員という三つを備えている人は、その時点で日本には2人しかいなかった。もう一人の方はご高齢で退官されたので、もしかすると一時期は一人だったかもしれない(笑)。精神科医で音大教員、または精神科医で音楽療法士とか、いくつかの条件がある人は何人かいますが、僕はやっぱりちょっと変わっているんですよ(笑)。東大行ってバンドばかりやってやめるなんて馬鹿でしょう(笑)。でもそのときに音楽を散々やっていたから、音楽の理論とか、音楽の技術は身についていたので、前の職場である音大でもジャズの理論を教えたりしていました。これまでの経験が、決して無駄ではなかったのです。こういう経験を経て、今でも、「こんな変わっている人間にしかできないことをやるのがいいんだろうな」と思っています。

Part2に続きます...

◆教員プロフィールを詳しく知りたい方はこちらへ↓
教員情報
https://faculty.surugadai.ac.jp/sudhp/KgApp?kyoinId=ymisgyogggy



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