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学部・研究科レポート
2025.06.03
「犯罪心理学を社会にいかす」リレーコラム(6):和智妙子教授
警察庁の科学警察研究所のお仕事
「犯罪心理学を社会に生かす」では、実際に犯罪心理学に関わる現場でお仕事をされてきた心理学部教員から、現場についてのお話しや犯罪心理という学問がどのように社会に生かされているのかなどについてのリレーコラムをお届けしています。
久しぶりの更新となった第6弾では和智妙子教授にご担当いただき、警察庁の科学警察研究所のお仕事について、ご紹介いただきます。

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先生が勤められていた心理専門職のお仕事について教えてください私が勤めていたのは、科学警察研究所(通称「科警研」)と呼ばれる警察庁附属の研究機関です。科警研に勤めているというと、科学捜査研究所(通称「科捜研」)と間違われることが多かったのですが、科捜研は各都道府県警察にありますが、科警研は国の機関で全国に1つしかなく、身分は国家公務員となります。
科警研には、生物、物理、化学、情報科学などを専門とする理系の職員が多く、文系の職員はそれほど多くいません。心理学を専門とする職員は、24研究室のうち5研究室のいずれかに配属されています。
科警研の主な仕事は、研究・鑑定・研修であり、犯罪捜査を支援するための研究を重視している点が科捜研の仕事とは異なります。鑑定に関しては、私は、実際の殺人事件や性犯罪事件などに対して、捜査を支援するための犯罪者プロファイリング分析や、裁判における心理学鑑定などを実施してきました。また、全国都道府県警察の科捜研の職員や警察官に対して、犯罪者プロファイリングに関する研修や、被疑者取調べ、被害を受けた児童の面接などの研修も行ってきました。
科警研での仕事のやりがいは、やはり何と言っても、自分が行った研究内容を、実際の犯罪捜査に役立てることができる点です。私が行った放火の研究結果が実際の放火犯の逮捕に役立ったと言われた時は、とても嬉しく思いました。また、被疑者取調べの研究を行うことで、日本の被疑者取調べの改革に貢献できたことも大きなやりがいを感じました。
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犯罪心理学は社会のなかで、どのように役立てられていますでしょうか?犯罪心理学は、犯罪捜査で昔から活用されていますが、近年、捜査における心理学の役割が大きくなっていると感じています。日本の捜査において、ポリグラフ検査は1950年代から活用されてきましたが、2000年代からは犯罪者プロファイリングが実際の捜査で活用されるようになりました。2010年代からは、被疑者取調べや被害を受けた児童の面接において、心理学的知見が活用されています。
※ポリグラフ検査とは、 「うそ発見器」と呼ぶ人もいますが、嘘を発見するための検査ではありません。犯人しか知りえない情報(例えば凶器)についての記憶を、呼吸などの変化を基に判定する科学的鑑定法です。
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犯罪心理学に興味のある方に向けて、一言メッセージをお願いします!犯罪心理学には、私が専門とする捜査心理学以外でも、犯罪・非行の原因から犯罪者の再犯予防、防犯、被害者の心理など、様々な専門分野がありますので、自分がどの分野に関心があるかを探ってみてください。
いずれにしましても、犯罪心理学は、テレビ番組等で受ける印象とは対照的に、科学的な視点を重視する学問ですので、しっかり心理学の勉強をすることが大切です。