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2026.02.09

情報処理教育センターだより(61)物語とICT(10)~自動運転とAI~

※イラストは「ロボットカー・自動運転車のイラスト」
「かわいいフリー素材集 いらすとや」(https://www.irasutoya.com/)から引用



情報処理教育センター 助教 新井葉子


国土交通省の示す自動車の自動運転レベルは6段階に分けられている。これは、米国自動車技術者協会(Society of Automobile Engineers, SAE)のレベル分けに準じたものだ。自動運転技術をまったく用いない運転をレベル0、常にシステムが全ての運転タスクを行う状態をレベル5と定義している。
レベル0 自動運転技術をまったく用いない運転
レベル1 運転支援(自動ブレーキ、前のクルマに付いて走る、車線からはみ出さない、など)
レベル2 特定条件下での自動運転機能(高速道路で遅いクルマがいれば自動で追い越す、高速道路の分合流を自動で行う、など)
レベル3 条件付自動運転(システムが全ての運転タスクを実施するが、システムの介入要求等に対してドライバーが適切に対応することが必要)
レベル4 特定条件下における完全自動運転(限定地域や高速道路での無人自動運転サービス)
レベル5 完全自動運転

※国土交通省「自動運転のレベル分けについて」https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdfを基に筆者作成

2017年時点では、日本政府は「高速道路での完全自動運転(レベル4)」実現の目途を2025年としていたが、2026年2月現在も実証実験中である。一方米国では、すでに2018年からレベル4の自動運転を導入しているエリアがある。Google系のウェイモが米国アリゾナ州で自動運転タクシーの有料商用サービスを始めたのは2018年8月だ。ところで、アリゾナ州ではこの年の3月にウーバー社の自動走行運転実験車両が通行人をはね死亡させるという痛ましい事故が起こった。ノルウェー科学技術大学のインガ・ストルムケが、この事故について次のように語っている:
  • 実験車両は通行人を「偽陽性」として分類した。つまり、ブレーキをかける必要のない対象物として分類した。
  • 分類は機械にさせるごく一般的なタスクだが、通行中の対象物を分類する機械を開発し、それにデータを与えたのは人間である。
  • 機械が見ているものは「人間」でも「ビニール袋」でもなく、ただの数値。その数値が表しているものが人間かビニール袋か、あるいは何か別のものかを判断するためには「しきい値」が必要だが、それを決めるのも人間である。
  • 人工知能(AI)に何かを決定させるたびに、最低1回はトレードオフ(二者択一)が必要。その判断をするのもまた人間である。
    (以上、ストルムケ 4―5頁より筆者要約)
将来、レベル5が実現したとしても、AIのシステムに責任を持つのは人間である。そんな当然のことを、私たちは見過ごしていないだろうか。こうした問題を扱ったSF作品に、安野貴博『サーキット・スイッチャー』がある。舞台は、レベル5が実現した近未来の日本だ。自動運転アルゴリズムの開発者がカージャックに遭う。犯人は、かつて自動運転車の事故で家族を失っていた。この物語が投げかけるいくつもの問い(トレードオフの問題、ムスリムの宗教観、オープンソースの考え方など)は読了後しばらく経った今も、心に残っている。そして、日々のニュースやふとした出来事と繋がり、少し先の未来を想像する手がかりになっている。

インガ・ストルムケ(翻訳:羽根由 監修:小林聡)『考える機械たち:歴史、仕組み、倫理―そして、AIは意思をもつのか?』(誠文堂新光社 2025)

安野貴博『サーキット・スイッチャー』(早川書房 2022)

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