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学部・研究科レポート

2019.09.28

中華圏周遊の旅 その2

現代文化学部教授  天野 宏司

「逃亡犯条例」改正案にわく香港

 香港では、犯罪者を中国本土に引き渡しができるように条例を改めようとし、これに反発する市民との間で、騷がしいことになっているのは報道で知っているかと思います。実は、香港がイギリスから中国に返還された記念日の7月1日前後に香港を訪問しようと思っていたのですが、所用で行けずこの時期になりました。結果としては、騷ぎが余計増している時期に訪問することになりました。香港を訪問したのは8月23日(金)のことです。この日に成都から香港へ飛行機で向かう予定でした。数日前にはデモ隊が空港を占拠し、空港そのものが閉鎖され飛行機自体も飛ばなかったため、結構不安を持ちながらの移動でした(不安の多くが23日で中国国内滞在のビザが切れるため、なんとしても一度中国から出る必要があったためです)。

 空港占拠自体はすでに解除され、裁判所により空港でのデモは禁止され、空港に入るには身分証のチェックを必要とするように改められたため、デモ隊の次なる行動としては、空港への交通妨害を行う手段が執られました。結果として、天野が乗った飛行機も、直接香港国際空港に降りることができず、一度広州・白雲空港に降り時間調整をして、約1.5時間遅れで香港に到着することになりました。

 建前としては一国二制度のもと、香港は1997年の返還から50年間は、独自の法制度を維持をできることになっています。しかし実際は、議会は親中派が多数を占め、香港の事柄が徐々に中国政府の意向に沿った内容に変わってきました。自らの代表を中国政府に支配されていることなどに反発した香港市民は、立法府に突入し中国の言いなりの議員・行政官達を「狗」とさげすむ落書きをして争乱を起こしました(報道によると議会内部も大荒れだそうです)。

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 23日の晩には「香港之路」として60kmにおよび人間の鎖を形成し手をつないで抗議をしました。その帰りには突発的な(政府に許可を取っていない)デモ行進にも遭遇しましたが、印象的であったのはデモに参加をする人々が、マスクを付け身元の特定に対抗をしていた点です。中国は現在、監視社会に突入し、入国に際し指紋の採集が行われますし、バスや鉄道の切符を購入するには身分証の提示が求められます。街中には監視カメラが多数設置され、報道によると警察官は、顔認証をするカメラを身につけ、街頭でパトロールにあたり、街ゆく人々の顔をチェックしているといいます。デモに参加をする人々は、身元が特定されることを防ぐためマスクを着用する訳ですが、実はこれを撮影している当方も、いつ中国政府の手先と思われないかとひやひやものでした。

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 市民による抗議活動にひとつに「レノン・ウォール」があります。香港各地に同時多発的に発生しているのですが、抗議文を付箋紙に書き、壁に貼り付けて抗議に参加をします。写真は大埔駅前のレノン・ウォールですが、トンネルになっているため通称「連儂隧道(レノン・トンネル)」と呼ばれるところです。トンネル内にびっしりと付箋が貼られているのが印象的であると同時に日本では見られない光景だと感じました。

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 香港の後に、上海~台湾へと移動しましたが2つの点で印象的でした。ひとつは、上海での出来事です。上海の人に、「香港から来た」と話をしたら「香港は今騷がしかったろう?」と返され、市井の人にも香港のデモの様子が漏れ伝わっていることを知ることができました。もう一つは、台湾において、香港でのデモを支援する動きが活発なことです。

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 この2つの写真は、何れも台湾において香港デモ隊を支援する様子を示しています。左の写真の「反送中」は逃亡犯を中国へ送ることに反対していることを表します。右の写真で描かれている右目を押さえた女性は、デモを鎮圧しようとした警察が催涙弾を水平発射したことによって眼球破裂した参加者を意識していると思われますが、女性(HK・香港)を男性(TW・台湾)が支援していることを表しています。伝統的に台湾の地は、中国に反し、同時に香港を支援することが続いてきました。今回もそのことがうかがえると同時に、一時的に近接するかに見えた中台関係も、大分遠ざかっていることを実感しました。



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