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学部・研究科レポート

2021.05.05

スポーツ科学部教員インタビュー(5)小丸 超准教授編

このシリーズでは、昨年度(2020)より駿河台大学に新設されましたスポーツ科学部の担当教員に話を伺い、お伝えしていきます。当シリーズの本年度インタビュアーはスポーツ科学部准教授の信太直己です。よろしくお願いします。
第5回目の今回は、准教授の小丸超先生にお話を伺いました。

20210423gendai_01.jpg小丸准教授

主な担当科目を教えてください。

主な担当科目はスポーツ社会学、スポーツ科学入門B、健康・スポーツ実習I、ゼミナールなどです。

スポーツ社会学とはどんな学問ですか?

スポーツ社会学とはスポーツと社会との関係について考える分野です。「社会」と一口で言ってもそこには「教育・政治・経済」といった様々な領域があります。その意味で、スポーツ社会学は非常に幅広い領域をカヴァーする学問分野です。たとえば、「ブラック部活動」という問題がありますが、これは大きく言えば「スポーツと教育」の関係について考察しているわけです。ところで、スポーツを扱う面白さは「スポーツには社会を変えるチカラがある」という点です。たとえば、テニスの大坂なおみ選手は(公の場で)黒人差別に強く抗議しましたが、この抗議は人々の意識(ひいては社会全体)に大きな影響を与えているように思います。

専門領域もしくは、今最も関心を持っている研究について教えてください。

専門領域はスポーツ社会学です。今は特に「体育会系」と呼ばれる集団特性に関心を持っています(ex.上下関係、忖度)。「体育会系」は必ずしも悪いものではないのですが、非常に根強く、パワハラや暴力の温床ともなっています。日本のスポーツ界を「開いたもの」にするためには、「体育会系」という私たちの常識を根本から問い直さなければならない、と考えています。

「体育会系」をどのようにしたい(または、すべき)と先生は思っているのですか?

「体育会系」は日本社会の原型のようなものなので、完全になくしてしまうことは不可能でしょう。親分子分といった関係性、あるいはホモソーシャルな関係性は、スポーツ界だけではなく、政財界などあらゆる領域に見られるものです。ただ、「体育会系」の負の面を見過ごすことはできません。私が期待するのは、「体育会系」での体験をもとに「体育会系」を否定する道です。たとえば、「体育会系」は基本的に理不尽な要求を課してくるわけですが、そこでの苦しい体験は(本来は)「体育会系」を否定するように作用するはずなんですね。しかし、実際はその「苦しい体験」は美化されてしまいがちです。「あの苦しい体験を乗り越えたから成長できた」。こう言いたくなる気持ちは分かるのですが、これは成長できた人の言葉であって、傷つき、ドロップアウトしてしまった人たちの言葉ではない、ということを忘れてはいけません。つまり、苦しみへの共感こそ「体育会系」を変えるものではないか、今はそう考えています。

今の専門に進んだきっかけを教えてください。

なかなか一言では言えないのですが、あえて言うなら「アスリートの哀しみ」に惹かれたからです。たとえば、野球の独立リーグには(NPBへの)夢を追いかける若者がたくさんいるのですが、彼らの中にはスポーツで得た快感が忘れられないという選手がかなりいるんですね。甲子園の大観衆の中で打ったホームラン、その乾いた感触は忘れようとしても忘れられないものなんですね。彼らはスポーツ界の中では落ちこぼれですし、周囲から「現実逃避」と見られることも分かっています。ただ、自分の中で「ケリ」をつけるために独立リーグにやってくるわけです。スポーツには「楽しさ」だけでなく「哀しみ」もある。そういう「哀しみ」を大切にできるスポーツ界であってほしい、そう思って研究を続けています。


信太:スポーツへの夢を追いかけている学生も多いですが、確かにトップアスリートとして活躍できる人はごくわずかですよね。結果的には活躍できなかった選手の努力も報われるように大学教員としては指導していきたいものですね。

ゼミではどのような活動を行っていますか?

ゼミでは卒論に向けて研究発表とディスカッションをひたすら繰り返します。退屈そうに思うかもしれませんが、毎回、何かしらのアイデアが出るので、なかなか充実していると思います。また、ディスカッションするためには「自由に発言できる」という雰囲気が大切ですので、節目節目にイベントを実施しています。たとえば、ゼミ合宿では、みんなで川のスポーツ(ラフティングやカヌー)を体験し、開放感が出てきたところで卒論の発表会を行います。あと、教員志望の学生には教員採用試験のための勉強会を毎週実施しています。

ラフティングやカヌーとは楽しそうですね。どこでやっているのですか、飯能でしょうか?

昨年はコロナ禍で実施できなかったのですが、一昨年は多摩川の上流で実施しました。関東では長瀞やみなかみが有名なので、その辺りでも実施したいと思っています。ただ、関東には、川幅が広く、雄大な川というのはあまりないんですね。たとえば、熊本県の球磨川や四国の仁淀川などは、ゆっくりした流れもあれば激流もある、という素晴らしい川です。東北まで足を伸ばせば北上川があるんですが、さすがにそこまで行くには費用がかかりすぎる。悩ましいところです。

20210423gendai_02.jpg多摩川でラフティング

20210423gendai_03.jpg飯能河原でイベント

先生はどのような大学生でしたか?

いたって普通の学生生活を送っていたと思います。バイトして、授業に出て、友達と遊んで、人並みに恋愛して、という感じです。 ただ、出身が社会学部なので、いつも自分や他者や社会をリフレクティヴに見ていたように思います。物事を客観的に見つめ、常に疑問を持つということです。真剣に勉強しはじめたのは、4回生の時、ゼミの先生の本を読んで感動してからです。それから哲学や社会学の本を狂ったように読みはじめ、研究の面白さに目覚め、大学院に進学しました。

本を読んで研究に目覚めたわけですね。お勧めの本はありますか?

お勧めの本はたくさんありすぎて、なかなか難しいところです。ただ、私は功利的にというか、自分のために本を読んできたんですね。たとえば、好きな人ができてどうしようと思った時には小説を読んでみるとか、どう生きていくかに迷ったときは哲学書を読んでみるとか。あるいは、スポーツの技術を向上させたいと思えば、その筋の本を読んで自分で試してみるのが効率的ですよね。自分自身の必要に迫られて本を手に取る。そういう読書でいいんじゃないかなと思います。

学生の皆さんへのメッセージをお願いします。

大学生は感性の豊かな時期ですから、いろんなことに挑戦してほしいと思います。この時期の体験は記憶に残り、人生のベース(支え)になるものだからです。海外旅行もいいと思います。私は2回生の時、カンボジアを2週間旅行したのですが、アンコールワットを横目に、地平線から朝日が昇る光景は何とも言えない「すごいもの」でした。世の中には空疎な言葉を発する人が多いですが、皆さんには強い言葉をいくつか持っていてほしいなと思います。強い言葉とは信念に基づく言葉であり、信念に基づく言葉とは体験に裏打ちされた言葉である、と私は思います。

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