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学部・研究科レポート

2019.07.11

臨床心理学専攻の院生が「第29回埼玉児童思春期精神保健懇話会」の講演会に参加しました

 令和元年7月7日(日)さいたま市で開催された第29回埼玉児童思春期精神保健懇話会の講演会に、臨床心理学専攻の院生たちが参加しました。

 テーマは、「性的虐待にどう対応するか-私たちにできることは何かー」でした。

 埼玉県中央児童相談所・児童精神科医の古田洋子先生による「問題行動・症状から見た性的虐待」、子どものこころのケアハウス嵐山学園 児童精神科医・当法人理事の早川洋先生による「性的虐待からの回復-児童心理治療施設での取り組み-」といったテーマでのお話を聴きました。最近は子どもへの虐待がニュースでたびたび報じられることもあり、今回のように性的虐待について正面切って取り上げられることが少ないこともあり、参加者の多い講演会でした。また、専門家たちがいかにこのテーマに関心を寄せているかということも分かりました。 

 お二人の先生によるお話は、臨床現場でどのようなことが生じているのかを踏まえ、幅広く、そして深い内容でしたので、聴いていると心が痛むこともしばしばありました。虐待を受けた子どもは傷ついた心身を抱えながら、それ以降の長い人生を歩んで行かなくてはならないのですから、大変です。今回の講演では、そういった子ども達の支援を行っていく専門家としてできることは何かについて、知っておくべき基本的な知識とアプローチについて教えていただきました。

 古田先生は、たとえ言葉での訴えがなくても、様々な症状や問題行動という形で、辛くて苦しい状態を知らせるサインを子どもが出していること、そのサインを大人はどのように理解していけばよいかという点について、事例を基に大変示唆に富んだ教えをくださいました。またこういった事象があることを、子どもの支援を行っている専門家がいつも頭の隅に置いておくことにより、子どもの問題に素早く対応することができるということ、できる限り素早く対応することが子どもの支援においていかに必要なことかということを強調されていました。

 早川先生は、性的虐待は語りにくいテーマのため敬遠されがちであることを指摘したうえで、適切な支援を行えば子どもは十分回復するということ、支援はなにも特別なものではなく「当たり前のことを当たり前に行う」ことが重要なのだということを教えてくださいました。また、子どもの受けた深刻な被害と向き合うと支援する側が傷つく可能性があること、そのために疲弊し燃え尽きていくという問題と対策についても、現場ならではの話を聴くことができました。

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 最後は「性的虐待にどう対応するか-私たちにできることは何か」という視点で、お二人の先生と江戸川区子ども家庭部の茂木健司先生を交え、フロアとの自由討論となりました。フロアの臨床経験豊富な先生方から質問が次々と出され、子ども達への援助を行うにあたってどのように寄り添っていったらよいのか、専門職としての知識をもっと広げておく必要があると思われるポイント等について聞きたいという熱意が感じられました。熱の入った質問は、予定していた時間内では収まりきらずに、会が15分延びたほどでした。

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 今回の講演会を拝聴して、改めて、子ども達が苛酷な状況で生きていることが分かりました。最近は「人生100年」と言われるようになってきていますが、生を受けて10年にも満たない子ども時代に心身に傷を受け、その傷を抱え生きていかなくてはならない人生の方が長い訳ですから、子ども達は大変です。それでも子ども達は生きて行かなくてはならないのですから、専門職として、一人の大人として、彼らにどのように支援していけるか、身につまされましたし、考えさせられました。

 今回のテーマは普段ではなかなか触れる機会がないものでしたので、院生達には貴重な勉強の時間となり、実りの多い日となりました。院生達はテーマの重さに圧倒されたようでしたが、臨床の専門家を目指すには、こういった自分自身の感情にもしっかり向き合い、抱えこむ体験が必要です。そういう意味でも学生にとって非常に刺激の多い講演会でした。

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