研究科紹介

心理学研究科とは

教育目標

「臨床⼼理学」と「犯罪⼼理学」の専⾨家の育成を⽬指す研究科です。

本学は2009年4⽉、⼼理学に対する社会的ニーズに応ずることのできる⼈材の育成を⽬指して、⼼理学部と⼤学院⼼理学研究科とを同時開設しました。このうち、⼤学院⼼理学研究科は、臨床⼼理学専攻と犯罪⼼理学専攻の2専攻からなり、昨今の⼼理・社会的環境への⼼理学からのアプローチを明瞭に意識し、具体的な実践を通じて社会に貢献できる⼈材の育成を⽬指した教育・訓練を⾏っております。

現代社会の多様化・複雑化・グローバル化、そしてめまぐるしい変化は、そこに⽣きる⼈々に過重なストレスや強い不安を喚起し、多くの不適応状況や病んだ⼼を⽣み出す源泉ともなっています。幼児や⾼齢者に対する虐待、家庭内暴⼒(DV)や恋⼈間暴⼒といったパートナー・バイオレンス、執拗ないじめや学級崩壊、うつや⾃殺、引きこもり、毎⽇のようにマスコミを賑わす殺⼈などの凶悪な犯罪、少年⾮⾏問題などなど…。これらは、“どこか遠いところの出来事”ではなく、⽇常茶飯に私たちのすぐ隣り、場合によっては私たち⾃⾝にも起こる出来事です。こうした問題に対処するためには、⾔うまでもなく、⼼理学の知⾒とそれに基づく⽀援や援助が⼤変重要となってきます。そして、⼼理学を現実場⾯で有効に機能させるためには、⼼理学の知識と技能を武器として扱う専⾨家が「⼈」や「社会」に⽴ち向かっていく必要があります。本研究科は、そのような実践的⼼理専⾨家を養成することを⽬指しています。

各専攻の教育目標

臨床⼼理学専攻

国家資格である公認⼼理師や公益財団法⼈⽇本臨床⼼理⼠資格認定協会認定の臨床⼼理⼠などの⼼理臨床家の養成を第⼀の⽬標としています。⼼理臨床家の養成には、適切な指導のもとで多くの臨床経験を持つことが不可⽋ですので、付属の駿河台⼤学⼼理カウンセリングセンターでの実習のほか、精神科病院、教育相談機関、福祉施設等の外部機関・施設での実習に特に⼒を⼊れています。もちろん、カリキュラムは公認⼼理師および臨床⼼理⼠の受験資格を得ることができるものとなっていますし、公益財団法⼈⽇本臨床⼼理⼠資格認定協会から第1種指定校の認定を受けています。

臨床⼼理学が主担当となっている専任教員は、精神科医師1名、公認⼼理師7名(うち、臨床⼼理⼠6名、精神保健福祉⼠1名)で、このほか⼼理カウンセリングセンターで臨床指導に当たる助教・助⼿が各1名(いずれも公認⼼理師・臨床⼼理⼠)となっています。

犯罪⼼理学専攻

司法・矯正・保護や被害者⽀援といった、⼼理学と法学とのコラボレーションを要する分野で活躍できる⼼理専⾨家の養成を第⼀に考えています。犯罪や⾮⾏などの社会病理的問題の理解とその解消を⽬指すには、法律や⾏政による対応に偏ることなく、そこに「こころ」の問題を溶け込ませて考えていかなければなりません。⼼理専⾨家が活躍を期待される分野は⾮常に広いです。プロファイリングなどの犯罪捜査、司法⼿続における虚偽⾃⽩の⼼理・適切な事情聴取⽅法・⽬撃証⾔の正確性/客観性に関する研究等、犯罪予防活動、犯罪抑⽌に効果的な環境整備、個々の犯罪者の更⽣⽀援、犯罪被害者⽀援などです。また、犯罪を通じて⼈間⼼理や社会病理の深淵に迫り得ることも魅⼒の⼀つです。なお、開設当初は「法⼼理学専攻」という名称でしたが、その後、法務省専⾨職員採⽤試験の新設、児童相談所の増設・増員、被害者⽀援制度の拡充などの司法関連領域の⼼理職へのニーズの変化を受け、2017年4⽉に「犯罪⼼理学専攻」に改編しています。

犯罪⼼理学が主担当となっている専任教員の専⾨領域は、犯罪⼼理学および法⼼理学のほか、基礎⼼理学、社会⼼理学、⼈格⼼理学、宗教学と多岐にわたっています。

さらに、本研究科では、両専攻横断的な教育や研究にも⼒を⼊れています。また、法務省専⾨職員(矯正⼼理専⾨職・法務教官・保護観察官)試験を中⼼とした公務員試験対策にも⼒を⼊れております。

⼼理学を通じて現実の社会に貢献したいと考えている諸君を歓迎します。

公認心理師資格と臨床心理士資格について

公認心理師法は、2015年9月に成立し、2017年9月に施行され、2018年9⽉に第1回試験が実施されていますが、試験は2019年度以降順次前倒しで実施され、2020年度は6月に実施されることとなっています。

そのため、心理臨床の実践においては、公認心理師と既にある臨床心理士という2つの資格が存在することとなります。こうした事情から、臨床心理学系大学院進学を希望する学生の皆さんから、「どちらの資格を目指すべきなのか?」などいった質問を受けることが多くなりました。そこで、現時点における本研究科臨床心理学専攻の基本的な考え方をお伝えしておきたいと思います。

公認心理師は、法律に根拠を持つ国家資格であり、精神科医療の現場などで勤務する場合にはこの資格が必須になるものと考えられます。また、他の領域でもこの資格を持つことを採用条件とするところが今後増えていくものと予想されます。ですから、現実的な話として、これから心理臨床の場で活躍しようと考えている人は公認心理師資格を取得するべきだと考えています。

しかし、公認心理師に対する社会的評価は、現段階では、「国家資格なのだから心理臨床の専門家として適格なのだろう」という推定や期待の段階にあり、まだ、安定したものとなっているわけではありません。このように、同資格に対する評価がどの程度の信頼度で安定するのかに関しては若干流動的要素があることは否定できません。

一方、臨床心理士は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定している民間資格です。しかしながら、1988年の認定開始から今日まで30年の歴史を持ち、既に各領域で高い信頼を確立しています。また、資格の更新制度があること、有資格者対象の研修が充実していることなどにより、有資格者の質が保証されていることに関しても高い社会的評価を得ています。したがって、公認心理師資格ができたからといって臨床心理士に対する社会的評価は低下しないように思われます。

そこで、本研究科臨床心理学専攻としては、公認心理師と臨床心理士の両資格の受験資格要件を満たすようなカリキュラムを用意しました。本専攻の場合、臨床心理士養成のための実習時間をかなり多めに設定している関係から、実習に関しては両資格に共通の科目となっています。しかし、その他の科目に関しては、両資格を目指すとなると臨床心理士資格のみを目指すのに比べてかなり多くの科目を履修しないといけなくなります。両資格を目指すと、率直に言って、負担は大きくなります。

しかし、この2つの資格を持つことで得られるメリットは、その負担に十分に見合うものです。ですから、本専攻としては、負担が大きくなることを承知の上で、学生諸君に公認心理師と臨床心理士の両方の資格を取得することを強く勧めたいと考えています。

本研究科臨床心理学が養成したい心理専門職像について

先のメッセージでは、本研究科臨床心理学専攻においては、公認心理師と臨床心理士の両方の資格を目指すことのできるカリキュラムを用意してあること、両資格を目指すことは臨床心理士資格のみを目指すのに比べてかなり多くの科目を履修しなければならず、負担が大きくなること、しかし、両資格を目指すことのメリットは負担に見合うだけのものがあることをお伝えしました。

さて、研究科長個人としては、両資格を目指すメリットは、「資格」が心理職として働くのに現実的な有利をもたらすということよりも、両方の資格取得のためのカリキュラムをしっかり勉強し、心理職として働くための知識・技能・姿勢を身に付けることができるというところにあると考えています。

公認心理師は、汎用性の資格ですから、臨床心理士と比較したとき、相対的には、心理専門職の貢献が期待されている各領域において、対クライエントのみならず、クライエントに関係する多職種・諸関係機関との関係において十分に機能するために必要な知識・技能等を身に付けることが求められていると考えられます。それがチーム医療、チーム学校、多職種連携などの概念の強調につながっていると考えられます。一方、臨床心理士は、「臨床」の語に象徴される個への寄り添いを基本として、その寄り添いをより適切かつ有効なものとするためにチームに参加するあるいは多職種と連携する必要があるという順序立てがより強調されていると考えています。こうした考え方は、誤解や偏りに基づくものであり、両資格は根本的なところでは同質だとの指摘があろうことは重々承知していますし、実際、基本的な考え方は同じで、違いは相対的でしかも些細なことだとも言えます。しかし、この些細かもしれない違いについて敢えて申し上げるのは、本専攻は、その些細なことを重視したい、つまり「臨床」に真摯に取り組み、クライエントを尊重する姿勢をしっかりと身に付けた専門職を育てたいと強く考えているからです。「姿勢」の問題は、心理臨床の専門職が終生向き合っていかなければならない課題ですが、その課題の重要性を、臨床の道を目指した最初の時点で身に染みて理解しないと後々回り道することになることは必定だと考えています。

もちろん、クライエントの利益を考えたとき、チームや多職種連携により支援することは重要かつ必要です。しかし、その中で心理専門職が埋没することなく機能するためには、心理専門職として「臨床」に真摯に取り組み、クライエント個人を尊重し、多職種から心理専門職としての知識や技能だけでなく、その姿勢を評価・尊重される必要があります。

誤解を恐れず申し上げるならば、取り越し苦労が過ぎるかもしれませんが、公認心理師のみを目指せば、相対的に個の尊重に関する教育訓練が時間的に不足し、臨床心理士のみを目指せば、多職種連携や関係法令・組織論に関する教育訓練が不足するといったことになると危惧します。研究科長個人としては、このような事態をどうしても避けたいのです。本専攻が、両資格の取得を目指すこととしている理由が分かってもらえたでしょうか。

繰り返しになりますが、両資格を目指すことは負担です。しかし、目指すことのメリットは負担に見合うだけのものがあります。

より高い水準の心理臨床専門家を目指す、意欲にあふれる学生諸君を歓迎します。



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