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学部・研究科レポート

2019.02.08

学部DAY実施報告その3

「『はたかち』カード・ワークショップ―自分と他者の中にある大切な価値観」

現代文化学部講師 鵜海未祐子

 11月22日(木)、日本キャリア・カウンセリング研究会の作田稔先生と長洲恵美子先生をお迎えして、生涯にわたる自己の生き方を見つけるキャリア教育として、2年生対象の学部DAYプログラムが実施された。このプログラムの特徴は、普段あまり馴染みのない同学年の学生同士で、カードゲームを用いながら、自己分析につながる議論を広げてゆく点にある。

 授業の冒頭では、学生の多くがやや無表情で指定された席に座っていた。しかし、話す機会がなかったり、考える暇がなかったり、といった自分の将来や同級生の目標などに関する議論を重ねてゆく中で、いつの間にか教室も熱気を帯びるに至った。

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 学生から回収されたコメントを見ると、言霊(ことだま)として自分のエネルギーになる言葉を手元に置くことの大切さ、自分を開いて仲間と交流する中で考えを深め続けることの貴重さ、日ごろ面識の少ない同級生との価値観の違いを知る体験の新鮮さ、限られた時間の中で自分を磨きつづけることの現実性、自分のすべきこと・したいこと・できることを重ねあわせて広げてゆくことの意義ぶかさなど、いずれも自分のキャリア形成に直結する内容や方法を学ぶことによって、前向きな認識や姿勢をつちかえたことがうかがい知れた。

 学生全体の傾向性として際立っていたのは、先生方からもご指摘があったように、安定・安心志向の根強さである。作業過程では、学生一人ひとりが、いろいろな価値づけが書かれているカードを分類する中で、生きていくうえで何をもっとも重視しているかという問題に向き合うことになる。その結果、大方の学生が、安定・安心を優先的に価値づけていることが明らかとなったのである。

 若者である学生にとっては、不安定にこくこくと移り変わる現代の社会認識ないし肌感覚のもと、自然と身につけた「生きる術(すべ)」なのかもしれない。しかしである。いつの時代にも、ともすると進歩をゆるめる旧態依然(きゅうたいいぜん)とした社会を敏感(びんかん)にとらえ、そこに新しい息吹(いぶき)を吹き込んだのは、前進するための批判的な思考や精神に満ちた若者たちではなかったのか。もしも学生の安定・安心志向が、生きがいとなる価値づけから距離をおくニヒリズムや、社会をななめに見て冷笑するシニシズムと背中合わせになっているとしたら、私たちをとりまく社会の漸進的(ぜんしんてき=すこしずつ)な停滞(ていたい)はきっとまぬがれないだろう。

 むろん学生全体に広がるそうした傾向性は、現代社会を日々再生産している大人たちの写し鏡(うつしかがみ)である面は否めない。社会に若者を送り出す大学の教職員として、学生特有の(本質を突く=深いところで重要な)という意味でのするどい冒険心や挑戦心を、いっそう活気づけるような教育風土の形成を心がけたいと、筆者も襟(えり)を正した一日であった。作田先生、長洲先生、誠にありがとうございました。

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