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第3回歴史探訪報告「大学と文士の街・本郷を歩く」

2018/09/05授業風景

現代文化学部 長尾 建 准教授

 6月16日(土)に行われた、第3回歴史探訪「大学と文士の街・本郷を歩く」について、ご報告いたします。
 前日から雨の予報がありましたが、当日は雨には降られず、むしろ比較的心地よい日和となりました。学生たちは地下鉄千代田線「千駄木駅」に集合し、千駄木から本郷を抜け、上野、御徒町まで散策しました。かなりの距離がありましたが、歩き疲れた頃に現れる歴史的スポットに励まされ、最後まで好奇心を持って歩いてくれました。
 今回前半は森鴎外の小説『青年』にちなんだルートを通ります。『青年』の主人公「小泉純一」は、上京翌日「東京方眼図」を片手に散歩します。根津神社から出発して、裏門を抜けて藪下通りへ、団子坂上を右に曲がり坂を下りて、その先上野へ向かおうとするのですが、この坂の下りたところに現在千駄木駅があります。今回はこれを逆に辿りました。
 まず団子坂を上りましたが、ここは江戸時代から「菊人形」の見世物興行が盛んだったところです(夏目漱石の『三四郎』に出てきます)。そして団子坂上左には、現在森鴎外記念館があります。ここで学生たちは記念館の展示を見て、1時間ほど勉強しました。

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 ここは『青年』にちなんで記念館があるのではなく、かつて鴎外の住居があった場所です。「観潮楼」といいます。ここで鴎外は観潮楼歌会という歌会を開催したり、文学雑誌「明星」の仲間と語り合ったのでした。若手詩人や作家たちは、本郷のあたりから藪下通りを通って観潮楼へ通ったそうです。また、『青年』を読むと分かるのですが、藪下通りは崖の上を通っており、つまりかつてはここから海が見えたということです。だから「観潮楼」なのです。学生にこのようなことを教えながら歩いていると、「汐見小学校」という名の小学校がありました。あるいは名前に名残を残しているのかもしれません。
 次に到着したのは根津神社です。これも『青年』にちなんで、裏門から入りました。ここは一説によると、1900年前日本武尊が創建したという由緒ある神社です。留学生もいたので、ここでは手水から参拝のマナーまで教えて、みんなで参拝しました。その後学生たちはおみくじを引いて、一通り騒いでいました。

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 次に東京大学に向かいましたが、途中に弥生式土器発掘ゆかりの碑があります。弥生式土器の正確な発掘場所ははっきりしないのですが、東大本郷キャンパス内にその遺構もあるようで、近縁であったことは間違いありません。このあたりの町名はもちろん「弥生」です。
 東京大学ではまず安田講堂を見学しました。学生運動といっても今の学生には想像もつかないでしょうが(そう言う稿者も想像がつきません)、学内に機動隊が突入したり、学生が犠牲になったりといった解説とともに、今は静かに建っている目の前の建物から何かを感じてくれればと思いました。
 その後、同じ東京大学の赤門に行きました。赤門は、おそらくテレビなどですでに知っている建物のようでしたが、これがかつて加賀藩前田家上屋敷の門だと知ると、大名の権勢に驚いていました。稿者自身は外国人観光客が増えたことに驚きました。

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 一休みしたあとで、上野公園へ向かいました。森鴎外の『雁』で有名な無縁坂を通りましたが、残念ながら学生は無反応でした。小説では無縁坂から上野公園の不忍池が見えたはずでしたが、高層建築2棟のために見えませんでした。時間も押していましたので、上野公園では西郷隆盛像だけ見ました。これはご存じの方も多いでしょうが、近代彫刻の祖・高村光雲の手によるものです。光雲は東京美術学校教授で帝室技芸員も務めました。ちなみにその長男が高村光太郎。同じく彫刻家で、『智恵子抄』などの詩集で知られる詩人です。さらにその弟が高村豊周。鋳金家で人間国宝でもありました。

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 最後に、上野から御徒町までアメ横を歩きました。アメ横はアメヤ横丁のことであり、戦後のいわゆる闇市から出発し、今なお当時の面影を残す商店街です。さすがにアメ横は、土曜日ということもあり、目もくらむ賑わいでした。予想としては、学生たちがいろいろなものに目を奪われ、なかなか前に進まないと思っていました。ところが、あまりの賑わいに圧倒されたのか、迷わないように一心に歩いていたのが印象的でした。久しぶりのアメ横でしたが、やはり外国人の多さに驚かされました。
 アメ横の御徒町側で解散にしましたが、有志で簡単な食事に行きました。そこでの学生の感想では、やはりアメ横に最も驚いたようでした。この賑わいと活気は、かなり衝撃的だったのでしょう。

 最後に学生の感想を二、三。
 「今回の探訪は、森鴎外が印象的だった。記念館では鴎外の生涯について学べた。鴎外については文学のことしか知らなかった。鴎外は医学の方にも活躍していた。...ほかにもアメヤ横町など鴎外以外のことも調べてみたいと思った。」(A.S 男性)
 「今回は事前のレポートでアメヤ横町について調べ、調べたものを実際に見ることができてよかったです。森鴎外記念館や、根津神社、東京大学では、事前に調べていなかったため、...深く知ることができなかったと思います。次の歴史探訪からは、レポート以外にも、行く場所のことは少しでも下調べしておくべきだと思いました。」(T.R 男性)
 「上野公園の、不忍池の一面蓮の葉が広がっている光景はとても迫力があり、思わずシャッターを切りたくなる場所であった。」(T.Y 男性)
 「今回の授業は楽しかった。」(留学生 女性)

 学生は事前調査(つまり予習!)の重要性を感じたようでした。一方、教員は「楽しかった」の一言に、どれだけ救われたことか。とにかく、学生にとって有意義な探訪のようでした。



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