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学部・研究科レポート

2017.07.28

ベトナム人留学生ガーさんにインタビューしました

現代文化学部 村上大輔講師

 ベトナム人留学生の現代文化学部4年、ガーさんにインタビューしました。


―ト、トイレの研究?

 そうですよ。日本のトイレについて卒業研究をします。もともとは村上先生が去年の授業で、日本のトイレは文化的に面白いとおっしゃっていたのを聞いて、私もその通りだ!と思ったのです。それで卒業研究のテーマにしました(笑)。

―そういえば、話したかもしれませんね。確か「地域と観光」という授業で...。日本のトイレの多様性や機能はすごい、「トイレ文化」といってもよいものが日本にはある、と。いかに心地よく快適に用を足し、そしていかに周囲の景観にマッチするようにトイレの建物が建てられているか、その工夫に日本文化が見えるみたいな話をしたと思います。授業の余談で。まさか、それを拾うなんて!?(笑)さすがガーさんです、留学生だからこそ、日本人が見えていない日本がよく見えているのでしょう...。
 前置きはこれぐらいにして、インタビューを始めましょう!

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京都に旅行中のガーさん

 はい。私は2012年に日本に来ました。当時は日本語が少ししかできなかったので、いろいろ大変でした。東京にある日本語学校で勉強しましたが、あまり上手くならなかったと思います。聞くことはできても、話す・書くことができない。自分の気持ちや考えを表すことができませんでした。日本語学校の後に専門学校に2年間行きましたが、クラスが外国人学生ばかりでした。日本人と交わる・話す機会がなかったので、自分の使う日本語が自然な日本語ではなかったと思います。
 それが駿河台大学に来て、沢山のレポートやゼミでとっても鍛えられました。今では、通訳や翻訳の仕事などもできるのかもしれない、と自分でも思うほど日本語が上達しました。これも大学で勉強したおかげです。

―そうなんですね。今なにも問題なく話せていますね。よほど努力したのでしょう。...そもそも、ガーさんはなぜ留学先に日本を選んだのでしょう?

 2つ理由があります。ひとつはベトナムの教育制度から離れたかったのです。私はハノイ出身で、都会の中で育ちました。都会の子供たちは大変です。勉強、勉強、勉強で、成績をいつも気にしています。学校が点数を上げることにとても厳しいのです。私は成績は良いほうでした。ちょっと自慢なんですけど(笑)。でも、学校も塾も嫌でした。点数至上主義だったのです。日本では、点数も大事だけど、もっと個人個人のペースに合った勉強ができる、学校もそのように指導をすると聞いたことがありました。それに憧れたのです。実際、私が通っていた「駿台トラベル&ホテル専門学校」では、学生一人一人の成長に重点が置かれていたと思います。
 また、交流会やイベント、研修旅行、インターンシップなど、学校の外で学ぶ機会を日本では(専門学校でも駿河台大学でも)与えてくれたような気がします。

―なるほど。ベトナムはもっと緩やかなイメージがありますが、子どもたちは大変そうですね。それで、2番目の理由は?日本を選んだ理由。

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ベトナム・ハノイにて

 多くのベトナム人は日本に対してとてもいいイメージを持っています。いいことばかりです。優しくて、真面目で、責任感が強く、そして都会でも空気が汚くない...。そういう日本で生活してみたいと思ったのです。

―実際、日本に来てどうでしたか?イメージどおりでしたか?

 もちろん、日本では嫌なこともありました。そのたびにホームシックになりました。でも、以前抱いていたようなイメージの日本の人々にもずっと会い続けています。...私は日本に着いた当初、最初の3か月はまるで海外旅行に来たような感じでした。外国に来て、とても楽しくて、あちこち旅行ばかりしていました。ですが、日本の物価が高いので、そのせいで、お金があっという間になくなってしまったのです。それで千葉県のクーリング工場でアルバイトを始めました。

―ほう。

 それでその時、私は本当にお金がありませんでした。お昼ご飯を食べるお金さえ我慢していました。学費と生活費のためです。...工場で働き始めたある日、お昼の時間がやってきました。私がもっともお腹が空く時間です。すると、一緒に働いているおばさんの1人が私に近づいてきて、私に包みを渡してくれました。なんとそのおばさんは、弁当を余分に多く作ってきてくれて、「あんたは若いんだから、ちゃんと食べなさい」と私にくれたのです。この時、私は涙が出るほど嬉しかった...。おばさんは弁当だけでなく、自分の娘さんのおさがりの服まで私にくれました。私はベトナム人です。日本の冬を越すような服は持っていませんでした。それで、寒いなぁと思っていたころ、おばさんは私にプレゼントしてくれました。どれほど嬉しかったことか。...そういうことが、工場のバイト先で何度かあって、ああ、本当に日本には優しい人がいるんだなぁ、と思いました。ベトナムでイメージしていた通りの日本人が。

―いい話ですね。ガーさんみたいに真面目で一生懸命に頑張っている女の子を見ると、周りが応援したくなるのだと思いますよ。本当に。いい人に出会えたんですね。日本の滞在し始めた頃に。

 はい。とても幸運だと思います。

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奈良公園にて

―いい体験もいろいろされてきたと思いますが、カルチャーショックみたいなものもありましたか?

 カルチャーショックというか、今でもショックなんですけど、日本では自殺が多いことです。

―たしかに、そうですね。それは過去数十年以上にわたって、日本の社会問題になっています。

 日本の人は優しい人も多いし、マナーもいいし、いい国だと思うのに、なぜ自殺が多いのか、最初はまったく分かりませんでした。実はベトナムでは、自殺というのは滅多に起きません。もし自殺者が出たりすると、新聞に載るくらい、それくらい珍しいことなのです。そのベトナムと比べて、なぜ日本では自殺が多いのか―。それは、私が日本人のいいところの裏返しのような気がします。

―というのは?

 日本には、先ほど私が言いましたように、とても責任感の強い人が多いです。周りの人に迷惑をかけてはいけない、時間は守るべき、という気持ちが強いのです。実は、それがあまりに強すぎると思います。自分よりも他人や会社や組織を優先し過ぎて、自分に大変なプレッシャーを与えています。...なので、私は東京の通勤電車に乗るのが苦痛です。"朝なのに"どうしてみんな暗い顔をしているのでしょう!?"朝なのに"だからではなく"朝だから"という理由に気づき始めた時、非常にショックを受けました。

―会社では、仕事の責任が明確に振り分けられていて、その仕事の量が殺人的な場合が少なくありません。特にブラック企業と呼ばれるところでは。

 私はハノイ人です。ハノイはベトナムの首都です。実はハノイ人はベトナムでは冷たくて有名なのですが(笑)、―おそらく首都というところはどこもそうなのかもしれませんが― 社会のプレッシャーがすごいですね。...以前、大阪に旅行に行ったとき、そこで街中を行き交う人々は普通に笑っていましたし、電車の中でも人々は普通に喋っていてうるさかったので、気持ちがホッとしたのを覚えています。車内でも人が、人間っぽかったです。東京の人は、いつも忙しそうです。ハノイ人と似ているのかも(笑)。

―いや、東京はやはり異常でしょう。おそらく同じ首都でもハノイよりずっとひどいと思いますよ。

 日本では若者たちは、気晴らしで遊ぶときにいつもディズニーランドやショッピングになってしまいます。人の家に集まってパーティとかが少ないのではないかと思います。人との交流の前に、スマホや遊園地との交流になってしまっているような気がします。

―そのとおりだと思います。僕はハノイのことは知りませんが、今や東京だけではなく、中国やチベットなどでもそういうことが問題になっていると思います。そういうことは、メディアではよく語られますが、ガーさんのような人が大学のクラスメートなどにいて、そういう話を直に日本の学生たちにしてくれれば、とても彼らの刺激になると思います。どんどん、びっくりさせてあげてください。日本の学生たちを。
 そういえば、ガーさんはそういう東京の大変さを知りつつも、卒業後も東京在住ですね。就職が決まったと噂で聞きました。おめでとうございます。

 ありがとうございます。実はその会社はベトナムとも深い関係を持っている会社で、日本のインフラをベトナムに輸出する企業です。

―これまた、これからどんどん伸びていきそうな分野に就職しましたね。将来が楽しみです。

 そうですね。その企業は実は衛生設備が得意な企業で、上下水道の配管などもやっており、その部署で働くかもしれません。

―ええ!?それでは、ガーさんの卒業研究のトイレと同じ分野じゃないですか(笑)!いやはやこれは、偶然か。

 働き始めたら、ベトナムと日本をたくさん往復することになると思います。ベトナム人のスタッフも結構いるようなので。

―どんどんベトナムにも帰ってください。東京にずっといると息が詰まりそうになるので(笑)。そして、もっとたくさんのベトナム人を東京に連れてきてください。いろんな人が日本にやってきて、日本、東京の社会の空気が少しでも変わるよう。

 はい(笑)。

―今日は忙しいところいろいろ話してくれて、ありがとう。楽しかったです。

 こちらこそありがとうございました。先生、最後にひとつ、いいですか?近いうちに、トイレ研究のアドバイス、お願いします。

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