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学部・研究科レポート
村上講師が日本旅行作家協会 第2回「斎藤茂太賞」審査員特別賞を受賞されました!
5月29日(月)に学士会館で受賞が決定したとのニュースを受け、受賞記念のインタビューをしました。
―この度は受賞、おめでとうございます。まず、率直に受賞された感想をお聞かせください。
ありがとうございます。受賞はまったく考えていなかったので、率直に驚きました。実は、昨年の夏、本ができたときは、なんでこんなつまらないものを書いてしまったんだ!と落ち込んだくらいです(笑)。でも、ノミネートされたと聞いて、読んでくれている人もいるんだと知って安心しました。
―昨年、10月に東京新聞、11月にアエラにおすすめ本として取り上げられましたが、受賞の予感はありましたか。
いえ、予感はまったくなかったです。これはブックレビューですし、たまたまコラムニストの方が取り上げてくれて、ほんとうに有難かったです。
―本の中で、チベット人たちのこころの路地裏、精神の風景の中をさまよい、こみ上げてくるものを「何かしら書かされている」感覚とありますが、読んでいても本当に自然体で過ごしていたように思います。自分の前世はチベット人だったのではと思ったことはありませんでしたか?
確かに、チベット人には「お前の前世はチベット人だったのではないか」とよく言われ、「そうなのかな(笑)」と思いました。外国人がなかなか住めない場所なので、長く住めたのは縁があったと感じています。
―ラサに8年間も滞在し続けられたのは、村上先生だからこそなし得たことだと私は思っています。
そうですね。外国人は研究者や、旅行者、チベット人と結婚した人くらいで、わたしのように足掛け8年も住んでいる人はいませんでした。民宿のようなところに1人で(正確には猫たちと!)住んでいました。後半は、ちょうどその頃、青蔵鉄道(青海省西寧~ラサ)開通で多くの日本人観光客がラサを訪れるようになり、旅行会社から現地ガイドを頼まれました。ガイドをしながら研究を続けるという恵まれた環境で過ごすことができて、やはりご縁だなあと感じています。
―わたくしが印象に残ったいくつかの場面についてコメントをいただこうと思います。
まずは、村上先生がいつのまにか雑務をして日々過ごしたという、心地よい風が吹く感覚のお寺の話をお聞かせください。心の治療が行われていたというそのお寺に、入るなとは言われなかったのですか?
チベット語ができて、この儀式(心の治療の儀式)に関心があるのなら、見ていけばという感じで受け入れてくれました。そして、人手が足りないようだったので、お賽銭を数えたり、祈禱の請負いをしたり雑務をするようになりました。
―チベット伝統医療の脈診について、詳しく教えてください。
脈診は、人間の気質・体質はルン・ティーパ・ベーゲンという3種の液体からなっているという考え方です。本の写真のように手首の脈で、表面と少し深いところとで読むんですが、匂いや色を診る尿診もします。実際にお腹が痛いときには、硬い丸薬を木のすり鉢で砕いて飲みましたが、よく効きました。チベット人も症状によって西洋医学かチベット伝統医学か、診てもらう医者を使い分けています。わたしもそうでした。祈祷(シャーマン)もあれば、先ほどのお寺での心の治療もありです。
―鳥葬に立ち会ったとありますが、貴重な体験ですね。
鳥葬は、親戚や家族は立ち会えないもので、逆に身内以外の人が立ち会うものなのです。
チベットでは亡くなった人の写真や遺品を捨てる習慣があります。亡くなった人に対して家族の人が執着を持ちすぎると、現世に故人の魂が残ってしまうことがあると信じられているからです。だからお墓もありません。死者との向き合い方が日本とまったく違います。...チベットは森がなく、隠れることもできないので、幽霊が生きにくい過酷な環境(日差しの強さと極度の乾燥)です。例えば千と千尋の神隠しやもののけ姫のような柔らかい精霊は生きられません。強い悪霊のみが生き残れる世界です。
―また、チャンスがあれば、ラサに行きたいと思いますか?
もちろん、旅行会社の手伝いで短期では行きます。でも住むことはないでしょう。家族がいますし。サバティカル(大学が認める長期研究調査)で行くことも考えられますが、年齢的な面と家族の説得が必要になりますね。
―今後、続編や関連本の執筆のご予定は?
そうですね。次回は、今回のひとつひとつの内容をさらに膨らませて、論文やエッセイとして残さなければいけないと思っています。
―本日は、ありがとうございました。是非、続編を書く機会に恵まれますように。そして、チベットの大地の匂いがたちのぼるような体験のおすそ分けを是非ともまたお願いします。
こちらこそ、ありがとうございました。執筆も頑張ります。
なお、授賞式は7月26日(水)にレストラン・アラスカ(東京都千代田区 日本プレスセンター内)で執り行われます。
一般社団法人 日本旅行作家協会の紹介文はこちらから
http://www.jtwo.net/Shigetashou2017.html