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学部・研究科レポート

2025.05.27

使う人を想像してデザインするということ:教室を例として

デザインとは、生活を身の回りから豊かにする活動〈action〉です。
例えば、座りやすい椅子や机、お気に入りの筆記具やノート、コップやお皿など、使いやすいという快適さと心地良いという豊かさを、身の回りに置こうとすることがデザインの始まりです。

いろいろな場所で授業をしていると、不思議な教室に出会うことがあります。教卓に座ると教員とスクリーンが重なって見づらくなる、椅子に座ると電源やモニターのケーブルが届きづらい、スイッチで切り替えられる照明の範囲が変…などなど。

私の父は都立高校の社会科の教員でした。校舎の改築の責任者になったとき、生徒と先生が使うものを新たに導入するために、モデルとなる教室をひとつ作るなどして検討を重ねたそうです(昔の話です)。どの席からでも見やすいように安全性に考慮した上で黒板を湾曲させたり、机の上の明るさが均等になるように照明の位置を考えたり、細かいものだと電源コンセントの位置、教室外の意外なものだと、グラウンドの砂の大きさを運動のしやすさと周囲への砂ぼこりとのバランスから決めたり、生徒がダンクシュートをできるように体育館のバスケットコートのリングの強度を考えたり、各教科の意見を取り入れ生徒や先生の理想を想像し、何をどのように導入すれば良いのかを検討したそうです。その話を聞いたとき、「デザインだな」と思いました。また、生徒も先生も教室を使う人という点では同じなのだと気づかされました。
使う人が実際に利用する場面を想像することは、デザインにとってとても大切です。私は本のデザインの仕事をしたことがありますが、読者が読む場面を想像し、書体や写真、紙を選び、読みやすさ、内容との親和性、開きやすさを考えます。学校や教室だけでなく、身の回りのものが何をどのように考えてデザインされたのかと思いをはせるのも、デザインを考えることにつながります。

ただし、不満をいうだけではデザインになりません。自分だったらどう改善するか(リ・デザインといいます)を考えてみると、デザインの勉強の第一歩を始めることができるでしょう。

執筆者:メディア情報学部准教授 井上智史

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