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- 私人逮捕系YouTuber、正義の味方か暴走か。
学部・研究科レポート
バズるというのは、「一時的にインパクトの強い宣伝をして、人の関心を集めるマーケティング手法のひとつ」だそうですね。バズれば高収入を得られるとなれば、そのとりこになってしまうのも、仕方のないことなのかもしれません。
しかし、世の中には「仕方がない」では済まされない「正義の暴走」もみられるようです。〈私人逮捕系〉と称するYouTubeチャンネルもその1つでしょう。昨今、私人逮捕系YouTuberその人が、相次ぎ逮捕されるとのヤブヘビ報道もありました。
たしかに、刑事訴訟法という法律には、「現行犯」であれば逮捕状がなくても、「何人も」逮捕できると明記されています。その一方で、逮捕は、人の意思に反して身体を拘束するという点で人権侵害の側面を持っているのも事実で、「三月以上七年以下の拘禁刑」が予定される、立派な犯罪でもあるのです(刑法220条)。
ですので、私人逮捕という行為は、緊急やむを得ない状況の下で、必要最小限の範囲で許されるものであって、バズって広告収入を得るために行うものではありません。ましてや相手を追い詰めて金銭をゆすり取るなど、言語道断です。犯行現場にあって、犯人を逮捕することに躊躇があってはいけませんが、正義は暴走させるものではない、そう思うのは私だけでしょうか。
執筆者:法学部 教授 長谷川裕寿
