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  3. 「犯罪心理学を社会にいかす」リレーコラム(5):遊間千秋教授

学部・研究科レポート

  • 先生が勤められていた心理専門職のお仕事について教えてください
    私は、法務省矯正局の心理技官としての少年鑑別所勤務を経て、警察の相談専門職になりました。心理技官については、このコラムで川邉先生、古曳先生が述べられていますので、ここでは、警察の心理職の仕事のご紹介をしたいと思います。警察の心理職の業務は、少年相談(未成年の人にかかる相談対応)、被害者支援、プロファイリングなどがありますが、私が主に携わっていたのは、少年サポートセンター(各都道府県警察に設置された、少年の非行予防のためのさまざまな活動を行う組織の総称)の相談員の仕事です。
    警察というと、犯罪にかかわる相談が多いと想像されるかと思いますが、実際には、学校内での逸脱行動、いじめなど、教育現場にかかわるもの、貧困や虐待など福祉にかかわるもの、そのほか不登校、ひきこもり、健康上の問題を抱える青少年など、幅広い対象者とかかわります。また、警察活動(捜査や補導など)の中で認知された、今後が懸念される子どもたちや被害に遭った人たちと接することも少なくありません。法務省では、多くの対象者が、家庭裁判所に係属中の人たちでしたので、それに比べると、警察がより社会に近いところにある組織だということを実感しました。少年鑑別所では、「トラウマを抱えている、支援が必要な非行少年」として認知される人が、警察にいると、「近隣に多大な迷惑をかけて、居場所がなくなっている困った人」であることがみえてきます。被害者の声を直接聞く機会も少なくありません。
    こうしたことはすなわち、犯罪や非行に陥った人たちの、社会での立ち位置であり、彼らが社会でどうみられているのか、そして、今後の立ち直り支援の難しさを感じることになりました。こうしたことをふまえ、少年サポートセンターでは、非行の初期段階にある子どもたちが、これ以上問題を深刻化させないために、関係機関と一緒に、子どもや家庭をサポートしていきます。他機関や他職種の人たちとの連携の場面も多く、心理のスペシャリストというだけでなく、ジェネラリストとしての役割を求められることが多かったように思います。
  • 犯罪心理学は社会のなかで、どのように役立てられていますでしょうか?
    犯罪報道に接すると、その犯罪の凄惨さやその行為をした人の個人的な特性などに目が向きがちになりますが、科学としての犯罪心理学は、その人や行動を幅広い視点から検証し、また社会的背景なども考慮して考えていく学問です。心理技官として、また警察の相談員としての勤務では、関わった人たちを理解し支援していくうえで、犯罪心理学の知見から多くの示唆を得ることができました。こうした人間理解の視点は、一旦犯罪に陥った人たちの社会復帰の支援にあたっても生かされていると思います。
  • 犯罪心理学に興味のある方に向けて、一言メッセージをお願いします!
    犯罪心理学を学ぶことは、深い人間理解と、社会背景への視野を広げることにつながると思います。犯罪や非行に陥った人の理解にとどまらず、ご自分の人生を考えるうえでの、新しい視点を得られるかもしれません。

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