MENU
アクセス
  1. トップ
  2. 学部・研究科レポート
  3. 「犯罪心理学を社会に生かす」リレーコラム(3):藤川浩教授

学部・研究科レポート

2023.12.19

「犯罪心理学を社会に生かす」リレーコラム(3):藤川浩教授

  • 先生が勤められていた心理専門職のお仕事について教えてください
    司法・犯罪領域の中で見ると、心理専門職が働く専門機関は、警察機関、司法機関、矯正・保護機関の3つに区分されます。このうち司法機関の心理専門職として置かれているのが家庭裁判所調査官です。私は、その家庭裁判所調査官等として長く裁判所に勤務してきました。
    家庭裁判所調査官は、家庭裁判所と高等裁判所に配置され、少年事件、家事事件、人事訴訟事件などに関与します。その職務は、裁判所に持ち込まれる多様な事件の関係者と面接し、事件担当の裁判官に意見書を提出することにあります。人が犯罪という行為に及ぶ背景には、多くの複雑な要因があります。その一つひとつを解きほぐしながら、少年の更生に向けた具体的な方策を検討していくことは簡単なことではありません。私も、これまで全国各地の家庭裁判所において多くの非行少年やその保護者、学校の先生方などと面接を行い、その少年がどうして非行に走ってしまったのか、どうすれば着実に立ち直ることができるのかを考え続けてきました。
    また、家庭裁判所調査官は、家族・福祉領域の仕事にも関与するという特徴があります。具体的には、家事事件として、離婚に直面している夫婦、親権や監護権が争われている子どもたち、養育者から強制的に保護する必要のある被虐待児、認知能力が低下して自身の権利を守れなくなった高齢者の方々と面接し、それぞれが直面する法的問題の解決に向けた働きかけを行ってきました。
  • 犯罪心理学は社会のなかで、どのように役立てられていますでしょうか?
    家庭裁判所が取り扱う事件は、単に法律的な観点からだけでは解決を図ることが難しいものが少なくありません。例えば、20歳未満で犯罪行為をした少年の処遇を決定する少年保護事件では、少年が犯した罪だけではなく、その生い立ちや家庭環境、交友関係、そしてその少年の資質や行動傾向などを慎重に見極めながら、どうすればその少年が立ち直ることができるのかを考え、そのための処遇を行っていく必要があります。
    その際に家庭裁判所調査官の判断の拠り所となるのが、犯罪心理学を中心とする行動科学です。行動科学の最新の知見は、非行少年を理解するために欠かすことができないものとなっています。家庭裁判所調査官はそうした行動科学の専門職として存在しており、その科学的な知見の有用性は、家庭裁判所調査官の存在意義や根拠ともなっていると言うことができるかと思います。
  • 犯罪心理学に興味のある方に向けて、一言メッセージをお願いします
    犯罪心理学は、単に犯罪行動を分析するだけの学問にはとどまりません。犯罪という究極とも言える人間行動を対象とすることによって、そこから明らかとなる人の心理の本質に迫り得る、とても奥深い学問だと思います。
    犯罪心理学に興味を持たれている多くの皆さんとともに、これからもこの学問をより深く学んでいくことができればと願っています。

関連リンク

学部レポート

    PAGE TOP