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- 「犯罪心理学を社会に生かす」リレーコラム(2):古曵牧人教授
学部・研究科レポート
法務省矯正局における法務技官のお仕事
「犯罪心理学を社会に生かす」では、実際に犯罪心理学に関わる現場でお仕事をされてきた心理学部教員から、現場についてのお話しや犯罪心理という学問がどのように社会に生かされているのかなどについてのリレーコラムをお届けしています。
第2弾は古曵牧人教授にご担当いただき、法務省矯正局における法務技官のお仕事について、また違った面からご紹介いただきます。

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先生が勤められていた心理専門職のお仕事について教えてください私も、川邉教授と同じく、法務省矯正局に心理技官として採用されました。主に少年鑑別所や刑務所で犯罪者や非行少年の心理的なアセスメントを行う業務を行っており、少年鑑別所では計6年間、刑務所では計4年間勤務しました。
仕事で苦労したのは、鑑別結果通知書という、アセスメントの結果を家庭裁判所に通知する文書の作成です。司法関係の文書は基本的に論理的に書く必要がありますが、人間は矛盾に満ちた存在なので、論理的に書くということに非常に苦労していました。
また、仕事をしていて困ったことは、犯罪に対する常識的な考えが失われていくことです。私は、学生のころに原付バイクを盗まれた経験があります。犯人はなんてひどいことをするんだ、と当時は思っていましたが、非行少年の話を多く聞いているうちに、いつの間にか原付の窃盗程度のことは大して悪いことではないと思うようになっていました。
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犯罪心理学は社会のなかで、どのように役立てられていますでしょうか?重要なことは川邉教授が書かれていますので、私は少し違う面から書いてみたいと思います。
一つ目は、犯罪の実情が分かることです。例えば、2006年度から成人の性犯罪者を特定の刑事施設に集めて調査を行うようになりましたが、調査を多く行う中で、数が少ないと思っていたタイプの性犯罪者が意外に多いことが分かったり、一般的には知られていない特殊な手口などを知ることができました。犯罪手口の情報を発信することには、新たな犯罪を誘発するリスクもあるのですが、うまく防犯に結び付ける方法があれば良いと思っています。
二つ目は、いろいろな社会の問題を知ることができることです。非行少年や犯罪者と面接をしていると、社会にはこのような問題があったのか、と思うことが少なくありません。世の中で知られていない問題ほど、周囲の人の理解や支援が少なく、孤立した状態で苦しんでいるケースが多く、そうした意味では、「生きにくさ」が非行や犯罪につながっていることを感じることが多々ありました(もちろん、そうして苦しんでいる人の多くは犯罪を行っていませんが)。様々な社会的な問題に対する世間の理解が広がることが、間接的に犯罪の減少につながるのではないかと考えています。
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犯罪心理学に興味のある方に向けて、一言メッセージをお願いします最近はインターネットでも犯罪心理学についていろいろ調べることができますが、偏った情報も少なくないようです。関心があるみなさんには、犯罪心理学を幅広く学べる大学でしっかりと学んでいただきたいと思っています。
リレーコラムは、これからも随時更新していく予定です。
今度はどのようなお仕事でしょうか…?どうぞ、ご期待ください!
今度はどのようなお仕事でしょうか…?どうぞ、ご期待ください!