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- 「犯罪心理学を社会に生かす」リレーコラム(1):川邉讓教授
学部・研究科レポート
犯罪心理学を社会に生かす
本企画「犯罪心理学を社会に生かす」では、実際に犯罪心理学に関わる現場でお仕事をされてきた心理学部教員から、現場についてのお話しや犯罪心理という学問がどのように社会に生かされているのかなどについてのリレーコラムをお届けします。
第1弾は、川邉讓教授から、法務省矯正局における法務技官のお仕事を中心にご紹介いただきます。

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先生が勤められていた心理専門職のお仕事について教えてください私は、法務省矯正局に心理技官として採用されて、主に犯罪者や非行少年の性格や精神状況のアセスメントや指導方針・計画の作成の仕事をしていました。具体的には、犯罪者や非行少年に会って話を聴いたり、心理検査をしたりして、彼らがなぜ犯罪をしてしまったのかを考え、健全な社会人として生き直すためにはどうしたらいいかを考える仕事です。ほかに、刑務所等の矯正施設の管理運営に携わる職なども経験しました。
私のやっていた仕事は、一般的には犯罪心理学でも犯罪非行臨床という領域に属し、犯罪心理学と臨床心理学の重なった部分になります。私は、法務省での仕事を通じて、自分では経験できない多くの人の人生や、自分の知らない世界を知ることができ、とても勉強にもなりました。また、お会いした人たちがより良い人生を送ることに関して、多少なりとも力となれると感じることができました。暗く険しい顔をしていた人が明るく柔らかい表情になったり、何かにつけてすぐにやる気をなくしてた人が何か目標を見つけて生き生きと頑張る姿を見るとやりがいを感じることができました。
また、犯罪非行には、人間や人間社会の本質が表れているように思える部分があり、これもまた犯罪非行臨床の大きな魅力です。
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犯罪心理学は社会のなかで、どのように役立てられていますでしょうか?既に述べたとおり、私は犯罪者や非行少年に直接会って、その人たちを理解し、立ち直りを支援するという臨床心理学に近い仕事をしていたのですが、ほかにも、心理学は犯罪非行領域全般で広く役立っています。例えば、犯罪捜査の面では、プロファイリングとか、自白や証言にウソがないかどうかの検討、正確な記憶を呼び覚ますための面接方法の研究が役立っています。また、犯罪を誘発しにくい環境作りや社会作り、防犯対策にも心理学が活用されています。さらに犯罪被害者のこころのケア、加害者の家族のこころのケアなども重要な領域です。
犯罪が少しでも減れば、人々は安心して生活することができます。また、犯罪者は皆、最初から犯罪者として社会から非難の目を受けながら生きようと思っていたわけではありまん。本来は望んでいなかった生き方をしてしまったという面があります。そういう人たちに、本来望んでいた人生の道に戻れるように支援することは非常に意味のあることだと思います。
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犯罪心理学に興味のある方に向けて、一言メッセージをお願いします犯罪心理学は、様々な切り口からアプローチすることのできる興味の尽きない領域です。きっと未知の部分がたくさんあります。それに加えて、社会に貢献できる領域です。是非、勉強してみてください。