発表(13) | ←戻る 目次 次→ | ||||||||||
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要約: |
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話は、右大将が造営なった二条殿に、吉野山の宮の姫君たちを引き取るところから始まります。長年の希望が叶って、娘たちを手放す父宮は、喜びつつも別れの悲しさを口にせざるを得ません。姉宮も妹宮も、それぞれに不安を抱きつつ山をおりねばなりません。二条殿に移り住む吉野山の宮の姉宮の幸福は、数多くの供人をしたがえた行列の美しさに象徴されていると思います。三区間にわけた御殿の中央に位置する建物を、常住の場とするということによって、右大将の正妻格として迎えられていることも、暗示されています。東側の建物には、いずれは右大臣の四の君を、西側の建物には、尚侍や女春宮のための部屋として用意されています。右大臣家の四の君と左大臣家の尚侍と、二人の女性が妊娠します。今度こそまさしく右大将の子を妊娠した四の君は、かえってはずかしさを感じ、右大将もまた純情な吉野山の宮の姉宮に妊娠の兆しのないことを嘆きます。尚侍の妊娠は、帝の限りない愛情をさらに増すばかりか、男皇子のいない状況から、もし、皇子誕生となれば、父左大臣や兄右大将の権力をも倍増させることになります。この様に同じ妊娠でも、夫の愛や周囲の状況は、これほどにも差があります。 ここで権中納言が登場します。彼は、まだ右大将と尚侍とが、それぞれの本性に戻って入れ替わった職についたことをまだ知りません。女装に戻って子を生んだ右大将が、再び男姿に戻って出仕しているのだ、と思いこんでいます。あまり楽しくない日々を送っていた権中納言は、ふと気がつきます。自分一人が苦しんで去っていった女を、なお忘れがたく思っているが、いったい女のほうはどう思っているのだろうか。男姿で身が自由でないといいながら、こんなにも思いきり良く縁を絶ってよいものだろうか。何を考えたのか、権中納言は、右大臣家の四の君につかえる左衛門を呼び出しました。左衛門のほうは、四の君へのおとずれも久しくないので、そういう恨みつらみの数々を聞き、自分も相手をなだめる気持ちで出かけました。しかし、権中納言は左衛門にうまく工夫して逢わせてくれとせがみます。これに対し左衛門は、右大将の以前と今との変わりよう、四の君の新たな妊娠、右大将と権中納言と二人の男に愛された不幸がもたらした四の君の立場など、際限なく語りつづけます。聞いている権中納言はいつしか非難されている自分を知って、かえって言葉を失います。権中納言には自分がなぜ左衛門を帰した後も結局は本人に事情を聞くしかないとあせる気持ちでいっぱいになります。一方四の君の心は、もはや権中納言にはありません。右大将の愛にひたすらなびく姿勢を示しています。右大将自身は、権中納言と四の君との縁も切れ、尚侍への愛も忘れ、権中納言があの女姿の宇治の人を失った悲しみにむしろ誠実さを取り戻したと見えて、吉野山の宮の妹宮の結婚相手にどうか、とまで思っています。しかし、決定までには至っていません。 |
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問題提起(ダイジェスト): | ![]() |
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T父を超えた右大将 | |||||||||||
U四の君と尚侍の妊娠 | |||||||||||
V権中納言について | |||||||||||
W一夫多妻 | |||||||||||
発表者:鈴木 巌 |
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