発表(12) ←戻る 目次 次→

要約:

春宮の出産から帝の想い

春宮は今右大将の顔にそっくりな子供を生むが、世間に公表することが出来ないので、こっそり中納言の君が子供を抱いて左大臣邸に連れて行く際、あらかじめ今大将は母上に知らせた。しかし世間体に向けては「大将が忍んで通っていた女性に出来た子」と取り繕った。

大将は以前のように右大臣邸で寛いでいることはなく、さっさと帰ってしまう。また吉野山の姫のもとにも十月か十一月かに四・五日行ったきりである。

春宮は出産後もなかなか病状が回復せず、「院の上にもう一度逢いたい、そして尼になりたい。」と言っていると、それを聞いた院の上は落着ける場所に移すことを考え、年内に朱雀院へ退出するように命じた。

この事態の意外な展開に驚いた帝は、左大臣が参内したときに「院の上がおられるから督の君が行かなくても…」と問いかけてみると 左大臣は「仰せのとおりで」と答えるので、帝は督の君に対する思いを伝えると大臣はいい加減な気持ちでないことを悟る。そして春宮が退出してからも院の上がいっしょにいるので、督の君は宮中に留まることになった。

中納言は身に添う影のようにして大将に付きまとい、話の出来る機会を伺っているが、大将は恨みごとをいわれていちいち応じる気もないので遠ざけている。

年が明けると大将は吉野山の姫君を迎えることを決め、二条堀川の三町の土地に壮大な豪邸を建てることにした。本来なら四の君を正妻として迎えるべきだが、中納言との一件があるので、その気になれない。

正月の行事が一段落ついたころ、帝は督の君のことが気になるので、宣耀殿のあたりを徘徊していると琴の調べが聞こえ、その音が督の君のものだと直観した。ちょうどその時、妻戸が開いていたので、こっそりと忍び込むが、誰も気が付かない。帝は今夜こそと思い、じれったく女房たちが寝静まるのを待ち続けた。

督の君はいつになく昔のことを思い出していると涙が出てくるので布団を被って寝てしまう。それを見た女房たちは督の君が寝たのだと思い、さっさと寝てしまう。

帝は誰もいないことを確認してから督の君の布団の隣に入ると、督の君は咄嗟に中納言が夜這いをかけてきたのだと思い込み、腹立たしく思い、衣を引き被って身動き一つもしなかった。この誤解を解くために帝は今まで督の君への思いを涙がらに、訴え続けると督の君は中納言でなく、帝であったことを認識した。またこのことで、帝はやはり督の君にとって最初の男でないことを知った。しかし退出する際、何度も何度も結婚の約束をしてから退出して行った。

帝は昨夜のことが忘れられず、手紙を出そうとしたが、女官だと返事がもらえそうもないと考え、右大将を呼ぶことにした。大将に手紙を託す際、ただ普通の手紙だと言い繕うが、即座に見抜かれてしまう。

宣耀殿に向かった大将は督の君と面会すると、督の君は気分を悪そうにして「胸のあたりがさしこみますのでおさえておりました。」というので大将は帝と督の君との間に何かあったのだと確信した。そして帝から預かった手紙を渡すが一向に開けて読もうとはしないので、すぐに返事をもらわなければならないことを伝えると、「ただ拝見しました」と伝えるように大将に言う。大将はこのことに納得して戻ると、「普通の懸想文と思われたのであろう」と帝は残念がるが、諦めず再度大将に手紙を託す際、「あの方をいとしく思っているので、今夜あの方の所にお導きください」と言うと、「やはりそうか。」と大将は思い退出した。

大将はこのことを隠していられなかったので父左大臣に報告するとうれしくて仕方がなく長年の苦の種もやっとなくなり、安心した。

その後の帝は昼も夜も督の君の側を離れない。

問題提起(ダイジェスト)

T女三人の順位付け
U「秘密の子」についての推論
V二つの「三瀬川」
W帝と中納言との行動の類似性
Xまとめ

発表者:寺岡 功司

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