発表(10) ←戻る 目次 次→

要約:

四の君の勘当解除から大将の復帰まで

中納言が沈み込んでいるうちに、四の君は今回もとてもかわいらしい姫君を産んだ。しかし四の君はかなり弱りきっていて、今にも死んでしまいそうになりながらも、父に会いたいと思っている。母上は「大変な事態」と思い、右大臣に泣く泣く報告した。右大臣はやはり恋しく思っていたので、このことを堪えがたく思い、「ええい、どうにもなれ。最期の時に会わないで死に別れてしまったらどれほどくやしくかなしいことだろう」と思って自ら四の君のところに行った。四の君を見ると、どんな人でも心を動かされてしまうだろうというほど美しいので、まして親の目にはかわいがっていた娘でもあり、「どうして勘当なんてしてしまったのだろう。つらい思いをさせてしまった。」とくやしくもかなしくもなり、「もうどうでもいい。仏よ神よ。私の命と引き換えにして君をお救いください。」と泣き惑い、自ら看病した。四の君も父上が看病をしてくれるのがわかり、父上の一生懸命な看病のかいもあって、容体は随分よくなり、右大臣邸に移す事ができた。中納言のほうも大将が突然いなくなったのがショックで何でも考えられなくなっていたので、四の君が「もうこれきり」と気を取り直したのも、折りとしては良かった。

吉野山ではいつまでもここにいられるわけもなく、左大臣や母上も心配させているので、こっそり京におでかけになるが、男君は宮の姫君と少しでも離れてしまうのが不安で、一緒に行こうと誘うが、宮の姫君は中の姫君のこともあるし、生活の差もあるしと断った。男君もそれもそうだと思い、春宮のこともあるし、きちんとすまいを整えてからお迎えしようと思った。

男君と女君は暗闇にまぎれて京に着いた。父左大臣は二人のすばらしい姿をみて、「このままいれかわってしまいなさい。反論する人などいないだろう。四の君も勘当が解かれて右大臣邸にもどっている。」というので、督の君は胸が張り裂けそうになる。

「督の君は容体が悪く臥せっている」と言いつくろってあったので、春宮からも使いがきていて、「宮もご気分がすぐれないご様子です。回復されたらすぐ参内するようにとのご意向です。」というのを聞いた男君の気持ちはつらいものでした。父左大臣もはやく参内しろと男君を急がすが、世の噂で「大将は権中納言の一件で心を痛めていたが、吉野での生活と父上の説得に心温められて山を降りた。」というのを帝もお聞きになり、とても喜んでお召しがあったので、男君は大将として参内した。

大将は四の君のことも、春宮を思い、吉野の姫君を本邸での正妻として、その二人の中にまぜるかたちならおいてみたいと思い、督の君に相談して手紙を書く。右大臣は「どうしたことか」と思ったが、四の君に返事を書かせる。返事のすばらしさに大将は心惹かれて、とうとう会いに行く。四の君はまさか別人とはおもわずおろおろしていたが、前の習慣は変わらないものと思っていたので、大将のあきれるばかりのお心の変わりように気が動転する。思いきって歌を詠んでみるが、かつての大将の真似をするので四の君に見分けがつくはずもない。

中納言は若君の成長ぶりをみながら大将のことを考え続けていた。人伝てに語る人がいて、それを聞いた中納言は大将が参内したという噂を聞き、たいへん狼狽する。顔だけでも見たいと思い、陣の定めには来るだろうと見当を付け参内すると大将は来たが、話をかける隙も与えない。一晩中考えて、堪えきれず大将に手紙を出す。今大将はそれを督の君にみせて、返事を書かせる。それを読んで中納言は、「身から出たさび」と思うが、とにかくありったけの詫びの言葉を書き尽くして返事を書くのだった。

問題提起(ダイジェスト)

T四の君の勘当解除
U噂
V今大将
W入れ替わりぶり

発表者:本橋 千晶

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