発表(9) | ←戻る 目次 次→ | ||||||||||
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要約: |
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女君の宇治からの脱出からとりかえの準備まで | |||||||||||
左大臣は大将のために様々な祈祷をし沈み込んでみたが、今宵の夢に僧があらわれ「そう考え込むな。このことは至極平穏に解決すると夜が明けたら事の次第を聞くであろう。あなたの心を絶えず悩ましてきたのは天狗の仕業によるものだった。しかし天狗も業が尽きてすべて事がまるくおさまり男は男に、女は女に元通りになる」というお告げを得た。そこで左大臣は(男君の)母上に夢のことを話すと母上は驚き、督の君についてのこれまでの事情を詳しく話した。左大臣は夢にみたことは正夢だったのだとうれしく思う反面督の君が男姿に戻って世に出ていったのを知らなかったなんてとあきれてしまった。そして明け方に男君が到着した。 左大臣は男君と対面し「大将はどのようにしていると聞いたのか」と男君に聞いた。男君は「女君は以前のような姿ではなく女姿でいました。『男姿では落ち着がずつらかったので元のように姿を変え、その姿に馴れてみようと、もうしばらくの間、姿を隠しております』といっていましたので意向に従って私だけが戻ってきました」と告げた。左大臣は夢のお告げそのままであると嬉し泣きまでし、女君が尚侍となり男君が右大将になればよいと提案する。男君は「長年閉じ籠っていた私にいきなりそのような交際はできません。ですのであの方の意向も確かめた上で決めましょう。まずはあの方をお迎えしてから改めて相談しましょう」と言い退出した。 宇治の女君は男君と会ったうれしさの名残がすべてが夢のように思われて、今では中納言に身を任せたままでいるのはおかしいことと思っていた。だが若君を吉野に連れていくのも具合の悪いことで、かといって、見捨ててしまうのもかわいそうだと考えていたが、親子の縁を切れるものではないし、あれほど誇らしい身の上であった私が、この子かわいさゆえに、こうしてまっとうな扱いを受けずに過ごしていていいものだろうかと、男として過ごしていた時の心の名残で強く決心した。そして女君は権中納言が四の君のもとにいっている間にここを出るのがいいだろうと決心し吉野の宮にそのことを知らせた。 脱出の日、人が寝静まるのを待つ間、女君は心中穏やかでなかったが、そんな素振りなどを見せず若君の顔を見つめて涙にくれている。しかしいざ脱出となると気持ちはいよいよ穏やかではいられず、かき乱れているが若君を乳母に抱き移した。女君はからだを引き裂かれるような思いであったが男として馴れ親しんできた名残の気丈さのゆえであろうか、きっぱりと思い切った。だが物影をつたってこっそり出かける時になって若君の面影がふと脳裏に浮かんできて引き戻されるような気持ちのまま、女君は車に乗りこみ翌日吉野に到着した。 吉野で女君は不愉快な思いが絶えなかった権中納言との生活から離れ心が安らいではいるが、自ら決めたこととはいえ若君のことが恋しくてたまらずぼんやりと考え込んでいる。男君はそんな女君の気持ちが理解できると、自分から春宮とのことなどを事細かに打ち明けた。そして二人はそれまでの立場の逆転を決心する。女君は男君に自分についてのあらゆることを教えた。女君はまた麗景殿の女性のことなどまで話し、四の君のことも「今は権中納言が面倒を見ているが昔の自分と同じように声をかけてあげて下さい」と話した。 男君は折をみては吉野の姫君たちに近づく。また一方宇治では権中納言が女君の突然の失踪を知り気が動転してしまい、捜し出して逢おうとも考えたが及ばず、悲しいばかりで沈み込んでいた。 |
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問題提起(ダイジェスト): | ![]() |
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T天狗の業 | |||||||||||
U女君の意志 | |||||||||||
V「とりかへ」への準備 | |||||||||||
W四の君のこと | |||||||||||
X権中納言の悲しみ | |||||||||||
発表者:佐藤 愛子 |
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