発表(8) | ←戻る 目次 次→ | |||||||
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要約: |
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男君は大将を探そうと出発したが行くあてがなく、乳母が「吉野の山の聖に通い、終の住処と約束されていたのでそこではないでしょうか」というので吉野を目指した。宇治川で、風情がある所を見つけて入っていくと簾が巻き上げてあり覗くと几帳の影に人がいた。見つめていると中の人も気配に気づき簾をさげてしまった。自分の姿を見て気がつくのではと進み出た。よく似た男君を見ると、大将と似ていると思うが奥に引きこもってしまった。その場を離れ「誰の住まいか」と尋ねさせ式部卿の宮の領地だと知ると面倒なことになると、姿を見たことを言葉にほのめかしもしなかった。 吉野の宮は男君を見ると驚き事情を聞くと七月の終わり頃には参るという約束を話し、きっと見つけだすことができると言うのであった。男君は予定の時期までここにいて連絡を待ち逗留することにし、両親にも告げ自分が都にいるよう装ってくれと頼んだ。 女君が臨月となり中納言は片時も離れようとせず無事に出産させたいと気を揉んでいたが、七月のはじめに男の子を出産した。女君は自分の手で世話をし片時も目を離さない。その様子に中納言は女君が自分を見捨てて離れたりはしないだろうと安心し四の君を宇治に呼ぼうとすると、女君は呆れたことと思いながらそんな素振りも見せない。 四の君の出産が近づくと中納言は長い間宇治を訪れなかった。手紙は日に何度も届き不安はないが、嬉しいはずもない。もし、右大臣が許したらあちらのほうが好ましく思うだろう、自分が右大将と知られるわけにはいかない。吉野の山に後の世のことを願いたいと思うと、今度は若君のことが捨て難く思うのであった。 七・八日たち宇治に来た中納言は何もかも隠さずにお話になったが「この先一緒にいる人でもない」と対応していた。夕方に使いが来て四の君の出産の兆候を告げると中納言は帰京した。「訪れを待つ暮らしはつらい、四の君への思いの報いだろうか」と思うが今までのこと、これからのことを相談する人もいない。女君は一人自分の心の中に想いを押し込んだ。翌日、出産を知らせる手紙が届き「どんなに思いつめても限りがある」と返事を書くと「短い逢瀬で馴れた人だから、さっぱりしているなあ」と思うのは間の抜けたことだ。 男君は吉野で長逗留の間に宮と学問をしていたが、約束した時期が過ぎるにつけ心もとなくなってきた、そんな思わしい夕暮れ時に男が手紙を携えてきた。どこかと訪ねる男君に、男は宇治の式部卿の宮の領地といった。やはりあの人だったと嬉しく、自分も返事を書いた。女君はこの返事を見ると以前と違う姿になったのも、そういう宿縁だったのだと思い「詳しいことは直接話をしたい」と返事を書いた。男君は自分の目で見てから殿に報告しようと宇治に出かけていった。 女君は乳母に兄弟がやってきたのでこっそりと会いたいというと、乳母は自分の局にやってくると見せかけてから夜に会うように取り計らった。家人が寝静まってから二人は再会したが、お互いの夢のように思われて話もできない。 二人はこれからどうするのかを相談した。女君は吉野の山に出かけようと話すと男君は「私は京にいるように装っているのでそのままの姿で京に戻ったらどうでしょう。それならば中納言が通っていても不都合はないでしょう」と提案する。女君が中納言には行方を知らせたくないと言うのを納得はするものの詳しいことは吉野へと移ってからにし、父とも相談をしなければと言うのだが、女君は「殿にこんな姿でいることを知られたくありません。」と恥ずかしがるありさまは以前の姿からは想像もできない。そうこうするうちに話はつきることもなく夜が明けてしまいそうになったので、男君はそのまま都に出発した。 |
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問題提起(ダイジェスト): |
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T男君の大将探索 |
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U女君と中納言の心の動き |
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V女君の出産 |
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W男君の吉野の逗留 |
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X男君と女君の再会 |
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発表者:渡辺 志保 |
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