発表(7) | ←戻る 目次 次→ | ||||||||
・ | |||||||||
要約: |
|
||||||||
権中納言と共に宇治へ発つ右大将には、まるで現実感がなく「これはいったいどうしてしまった我が身か」と気は滅入るばかりで、宇治の邸に着いても「引き返したい」という気持ちは募るままにその夜は暮れた。 翌日、のぞみの叶った気分で一杯の権中納言の方は、大将に本来の性である女としての格好をさせその美しさに狂喜している。一方の大将は悲しくで仕方がないが、本来あるべき姿であると思うと恥ずかしい気持ちになる。 その頃、京では右大将の失踪で大騒ぎになっていた。父左大臣は「変わった我が身だと思ったのだろうか、ここまできて然るべき理由なしで出家する筈もない、どうして見咎めてやれなかったのだろう」と悔いた。 右大将は、娘の四の君が沈み込み、妊娠の気配もあるため、夫である右大将の失踪を恨めしく思っていた。しかし、世間ではおかしな噂も流れ始めていた。というのは、四の君と権中納言の密通のことであり、生まれた姫君も権中納言の子である、という真実だ。右大将の失踪の原因はそれだろうと思っていた左大臣のもとに、不安を感じていた右大臣が訪ねた。右大臣の泣き言を聞く左大臣もこの件で普通ではなく、その噂の事を右大臣に伝えてしまう。それを聞いた右大臣は涙も止まり慌てて帰っていった。四の君をよく思わないある乳母が、こういう成り行きを耳にはさみ、四の君と権中納言の関係の詳細が書かれた、誰かに当てた風の手紙を右大臣の目に付きそうなところにわざと落とし、これにより四の君は勘当され、邸を追い出された。それを不憫に思った四の君の乳母は他に頼れる人はいない、と権中納言に手紙を綴った。 手紙を受け取った宇治の権中納言は、すっかり女姿が板に付いた女君(右大将)と相談し、気の毒である四の君の元へ「夜の間だけ」と言って向かった。 今にも息を引き取りそうな四の君に朝まで添い臥してやるが、別れて出て行く気にもなれないので、こっそりと人を呼び、安産のための祈祷を始めた。 大将の事にも気になる中納言は泣く泣く宇治へ帰る。 女君は権中納言の四の君に対する思いと、自分に対する愛情とが、一体どちらが深いのか疑わしく思われ、怒りを覚えるが、出産するまでは他に頼れる人もいないので心の中で問うに止めた。 督の君は、大将の身の上の辛さを思い黙って行かせてしまったことを後悔した。そして、男姿になって大将を探すことを決意し、探せなかったら、自分も深山にこもりそのままの姿で身を隠してしまおうと思う。 男姿で探しに行くことを母上にだけ告げ、狩衣に指貫の用意をし、長い髪をばさっと切って髻に整えた。その姿は大将そのもので、殿(左大臣)に大将として顔を見せてやったらどんなに喜ぶだろうと母上も乳母も慰められる思いだった。 それにしても尚侍(督の君)は、妊娠の様子のある春宮を見捨てるかのようにして出て行ってしまうのには心が痛み、互いがかけがえのない存在であることを確かめあう和歌を贈りあった。 武士を七・八人連れて出ていた尚侍であったが、側近のいつもと変わらぬ振る舞いで尚侍が消えたことに気が付くものは誰もいなかった。 |
|||||||||
![]() |
|||||||||
問題提起(ダイジェスト): |
|
||||||||
T四の君の勘当 | |||||||||
U忘れかけたはずの四の君 | |||||||||
V右大将の嫉妬 | |||||||||
W右大将と尚侍の比較 | |||||||||
X女東宮と尚侍 | |||||||||
発表者:清水 俊亮 |
|||||||||