発表(5) ←戻る 目次 次→

要約:

人前に出ると宰相とも顔を合わせるはめになるので中納言は気分が悪いのにかこつけて外出もしない。宰相は日に何度も恨み事を言い、「中納言が参内なさる。」と聞くと胸が高鳴って動転する。中納言はよそよそしくなんとも頼りなくわびしい気持ちになる。

帝のお召しで参上した中納言は、帝に気に入られ長いこと退出を許さないでいた。宰相は「帝がもし自分のように中納言の正体を知ってしまったら普通でない姿であっても、他の女性に心移りなどしないだろう。」と思い、気が気でなく胸がつぶれる思いだった。

やっと帝の御前をさがってきた中納言は宰相の誘いを断りきれずその夜、宮中に留まった。そこで恨み事を言う宰相に自分を本当に愛しているなら人目につかないようにしてほしいと言う。そこで宰相は四の君では心を慰めることは出来ないと話す。これを聞いた男の移り気に嫌気がさした中納言はいつか宰相が自分の正体を人に話してしまうのではないかと心配になる。

影のようにつきまとう宰相を中納言はしかるべきひまをつくっては四の君に会わせていた。四の君に対しては中納言への満たされぬ思いからか愛情深く接していた。

乳母の家に身をひそめていると、そこにまで宰相がたずねてきて中納言に女装にもどるようにすすめたが、簡単にはもどれないことを嘆いていた。

宰相の頼みはなかなかかなえられずいつもよりも長く乳母の家に籠もっていたので右大臣と四の君から心配の手紙がくる。中納言は四の君からの手紙に真剣になる宰相に不信感をつのらせるが、本人は中納言と逢えたよろこびで舞い上がり、中納言が右大臣邸に帰ろうとするのをとめようとまでしている。

四の君が妊娠し、それに続いて中納言も自分の妊娠に気が付く。宰相に相談したところ女装にもどり自分と一緒に暮らすことを強くすすめられる。それをしかたのないことだとあきらめていたが、宰相が自分を手に入れた気でおり、心配して四の君のほうに目を向けだしたことに気が付いた中納言はその不信感からか死をも考えてしまう。

十二月に中納言は左大臣のもとに参上するが、我が子のそのやつれた様子に左大臣は驚きを隠せない。父を心配させまいととりつくろって食事などをとる中納言。心配はするが、その心中までは見抜けずよろこんで一緒に食事をとる左大臣の母上のほうはというと、そんなことには全く神経が働かず気にもとめていない。

問題提起(ダイジェスト)
T宰相の強い思いと中納言の動揺
U宰相の膨れていく欲望
V中納言の迷いと悩み
W四の君、そして中納言の妊娠

発表者:岩倉 大介

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