発表(1) ←戻る 目次 次→

要約:

中将の君の結婚と姫君の出仕

そうこうするうちに権大納言は左大臣になり、関白と兼任することになった。左大臣の侍従の君も三位の位を得て中将となった。その左大臣の兄、右大臣は中将の君が人柄もすばらしく、軽率なところもないということで四の君の婿にと望み、早速左大臣に打診した。しかし左大臣は断る口実も見当たらないし、相手の四の君はまだ子供っぽいということで承知してしまった。そして、婚儀も盛大に執り行なわれた。

そんな折、大納言を務めていた人が亡くなったので、皆順次昇進し、中将の君も中納言と左衛門の督を兼任することになった。そして式部卿の宮の中将も、中将と参議を兼任することとなる。その宰相の中将は思いを懸けていた内の一人である四の君が中納言と結婚したために、しばしふさぎ込んでいた。その中納言と四の君は、もちろん夫婦の契りを結ぶことはなかった。普通の女性ならば、変に思うところだろうが、四の君は幸いまだ子供っぽかったために不審には思っていなかった。

ある日、中納言は梅壺の女御が帝のもとに参上するところへ偶然とおりがかった。その梅壺の女御や女房達が華やかに装っているのを見て、「自分も人並みであったらいいのに。本来の性を隠して過ごしているのは正気の沙汰ではない。」と嘆いていた。また、宰相の中将は姫君への恋心を募らせては中納言を見て、その心を慰めていた。

そんな中、院の上は女春宮のお世話係として、左大臣の姫君を出仕させたと考えていた。ここでも左大臣は、中納言の結婚のときと同じように断りきれずに承知してしまった。そして、姫君は尚侍の肩書きで宮中に出仕することになった。女春宮は尚侍と次第にうちとけ、よい遊び相手となった。尚侍は、女春宮を愛らしく思うようになり、本来の性を女春宮にだけ明らかにした。女春宮のほうも、尚侍の出過ぎた行動に驚き、意外にも思ったが、尚侍の人柄はすばらしかったので「なにかわけがあるのでは」と思うくらいだった。一方、宰相の中将は良い機会とばかりに尚侍の局のあたりをうろついたりしていた。

その年の五節に、中納言にすっかり心を奪われてしまった女性がいた。その女性というのはどうやら、麗景殿の女御の妹だったようだ。中納言はその女性といくつか歌のやりとりをした。

年も改まったある日暮れ時、中納言と尚侍はそれぞれ、笛と筝の琴で演奏をしていた。それはすばらしい音色であった。それをちょうど宰相の中将が聴いており、「なんとすばらしい音色だろう。」と感動する反面、「あれほどまで何事にも一流の中納言を見慣れていたらどれほどのことであってもお耳にはとまるまい」と思うと、ひどく妬ましくも残念でもあった。

問題提起(ダイジェスト)

T侍従の君と四の君の結婚について
U・V中納言や尚侍の性の交換に関しての本人達の考えについて
W姫君の出仕について
X中納言の両性具有性的性格と物語全体の主人公について

発表者:中山 千波

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