「189(イチハヤク)」を知っていますか?

昨年から今年にかけて重大な児童虐待事件の報道が続いています。私のところにも、マスコミからの問い合わせが数多く寄せられています。

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(子ども虐待防止のオレンジリボン)

 平成29年度、全国の児童相談所が対応した児童虐待の件数は13万件を超えています。児童虐待により死亡した子どもは、親子心中を含めると、平成28年度では77人、1週間に約1.5人の子どもが命を落としています。

 児童虐待は、現在のわが国では緊急に解決すべき重大問題であるとして、関係閣僚会議からは緊急・総合対策が打ち出され、児童福祉司の増員、警察と児童相談所との虐待情報の共有などが講じられました。これらの対策により、親からの虐待に苦しんだり、命を落としたりする子どもが一人でも減ることを目指しています。

 こうした対策では、子どもを親から離し、保護することも行われますが(目黒区や野田市の事件では、このような対応で児童相談所や市区町村の不手際が問題視されました)、これと並行して、そもそも虐待それ自体が発生しないように社会を変えることも必要です。孤立した子育てへの支援、貧困家庭への援助、予期しない妊娠への対応などの施策とともに、子どもへの暴力や暴言、無視などの不適切な養育をしないようにすることも重要です。これらの養育方法は、子どもの心と体を傷つけるだけでなく、子どもの脳の重要な部分を縮小させ、対人関係の困難をもたらすからです(この目的から、現在、法律による「子どもへの体罰の禁止」が検討されています)。

 子どもへの虐待をなくすには、これらの不適切な養育方法を用いずに子どもを育てる重要性とともに、社会全体が不適切養育の危険性を十分に理解し、暴力、暴言等をしなくても子育てができるように子育ての方法を学べる機会を作ることが必要です。

 昨年の大学スポーツでの暴力、いじめなど学校での暴力、戦争という暴力、世の中にはさまざまな暴力があります。子どもにとっての最初の暴力が親から子どもへの、家庭の中での暴力です。

 児童虐待をなくすのは、行政や専門家だけの仕事ではありません。私たち一般の人間でも、子どもと子育て中の親を温かい眼で見守り、ほんの少しの心遣いをすることが、虐待の原因である子育てのストレスの軽減につながります。このようにして、「子どもと子育てにやさしい社会」が「子ども虐待のない社会」につながるのです。

 それでも近所に心配な子どもがいたり、ただごとではない泣き声が聞こえたりすることもあるでしょう。そんなときは、ほんの少しの勇気をもって「189(イチハヤク)」に電話してください。虐待されている子どもは、自分が虐待されていることに気が付かないこともあり、子ども自らがSOSを出すことは困難です。周囲の気づきとほんの少しの勇気が子どもを救うことになります。子育てを親だけの責任にすることなく、周囲の人みんなで子どもと子育てを支える...そんなことが当たり前の社会になることを願っています。