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学部・研究科レポート

2016.05.30

大河ドラマ「真田丸」ワンポイント解説(18)

法学部教授 黒田基樹

 5月29日(日)に放送された第21回も、結構盛りだくさんの内容でした。この回から、いよいよ天正壬午の乱からの争点になっていた、上野国沼田領問題が決着する、小田原合戦へと本格展開していきます。

 今回で注目されるのは、何と言っても「惣無事令」とは何か、ということでしょう。秀吉が大名に命じたその内容は、大名同士の戦争は互いの領国の境界をめぐるものだから、それぞれの領国の境界は自分が裁判で解決するから、停戦せよ、というものでした。ドラマでは、これを秀吉の御前での裁判劇にすることで、惣無事令の性格を端的に表現しているのです。

 そもそも秀吉の「天下統一」は、諸国の戦国大名を従属させることで遂げられていきます。これまでは大抵、統一する側の秀吉目線で語られてきました。今回、注目されるのは、それを、服属する大名側の目線で描いていることでしょう。その際、すみやかに服属した上杉景勝と、最後まで抵抗する北条氏政が対比的に設定されています。

 第14回で、景勝が秀吉に従うことについて様々語っていましたが、それは仕方なく従わざるを得ないことへのジレンマがよく表現されていたと思います。それに対して氏政で描かれているのは、決して他者に福属することがない、戦国大名というものの本質といえるでしょう。秀吉の「天下統一」とは、戦国大名を戦国大名でなくすものでした。それは戦国大名としては自己否定でしたから、服属という決断は簡単ではなかったのです。

 こうしたかなり奥深い内容を、物語として面白く仕立てている、三谷さんの物語構成力の質の高さには、驚かされるばかりです。その前提には、三谷さんがそうした最新の研究成果を充分に吸収されていて(そこでは時代考証担当も情報提供しています)、それを理解されたうえで、物語作りに取り込んでいくところが、すごいところだと思います。「真田丸」が様々な方面からも好評なのは、こうした史実をきちんと踏まえたうえで、物語として面白く展開しているからでしょう。

 おまけ。これは聚楽第の廊下の襖絵です。これらはもちろん手描きだそうです。本当にそれらしくできていて、凝ってますよね。

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