第二巻要約

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四の君の出産を大変喜ぶ右大臣。中納言は生まれてきた子供を見て、相手は宰相であったと思う。中納言は四の君に対して「他人の血を引いた子を傍において可愛がらなければならないのでしょうか」と言う。四の君は涙を流し思い悩む。

七日の祝いの席を病気で欠席し宰相は左衛門に頼み四の君とあった。四の君は「悪い時に」とは思うが拒みはしない。外では中納言が歌を歌っているのを宰相は「これほどの人をお世話しながらなぜ馴染まなかったのだろう。他に何を気に病んでいたのか」と考える。衣装を換えに四の君の部屋に来た中納言は帳台の中に妙な気配を感じる。そして、男の扇を見つけて改めて四の君の相手が宰相だと知る。しかし、宰相を咎めるよりも、中納言は四の君を非難する。

宰相は四の君との辛い恋を慰めるために督の君(尚侍)に会いに行くが「手紙をください。また会う機会はあります」となだめられてなにもせずに帰って行く。

その後、督の君からの手紙はなくなり、同じ顔の中納言を見ても涙が出てくる。四の君とは人目が気になり、督の君には会うこともできず宰相はとても辛い心情である。

宰相は中納言に会って心を慰めようとする。中納言はくつろいだ姿でおり、その姿に心奪われた宰相は中納言に寄り臥す。宰相は自分の恋の辛さを訴え、それに対して中納言は「あなたの恋心は一つではないようですね」と皮肉を言って起き上がろうとするが、逃れられず、どうすることも出来ずに涙を流す。宰相は驚きながらも四の君と督の君への恋が合わさったようになり、「これほどの女性はいなかった」と感じる。中納言は恥ずかしさのあまり涙が止まらない。

夜が明けてなかなか帰らない宰相に対して「男である自分には気楽に会える」と言って帰らせようとする。宰相は中納言を一時も離したくないと思いつつ出て行く。中納言はこの世から消えてたいと思うが両親のことを考えるとそうもいかないと悩む。

宰相から「死ぬほどに会いたい」と後朝の歌が来る。中納言は女であるからと返事をするが「会う人ごとに死ぬ死ぬ言っているが長生きですね」とかえす。右大臣邸にいるのに「会いたい」と言ってくる宰相に対して露見を恐れ「私も苦しんでいる」と返事をする。宰相は右大臣邸までやっと来て中納言に会おうとするが、中納言はもう二度とあんなことになるまいと病気と言って会うのを断る。宰相は四の君もいる縁のある場所を去りがたく思うが人目をはばかって帰って行く。

人前に出ると宰相とも顔を合わせるはめになるので中納言は気分が悪いのにかこつけて外出もしない。宰相は日に何度も恨み事を言い、「中納言が参内なさる。」と聞くと胸が高鳴って動転する。中納言はよそよそしくなんとも頼りなくわびしい気持ちになる。

帝のお召しで参上した中納言は、帝に気に入られ長いこと退出を許さないでいた。宰相は「帝がもし自分のように中納言の正体を知ってしまったら普通でない姿であっても、他の女性に心移りなどしないだろう。」と思い、気が気でなく胸がつぶれる思いだった。

やっと帝の御前をさがってきた中納言は宰相の誘いを断りきれずその夜、宮中に留まった。そこで恨み事を言う宰相に自分を本当に愛しているなら人目につかないようにしてほしいと言う。そこで宰相は四の君では心を慰めることは出来ないと話す。これを聞いた男の移り気に嫌気がさした中納言はいつか宰相が自分の正体を人に話してしまうのではないかと心配になる。

影のようにつきまとう宰相を中納言はしかるべきひまをつくっては四の君に会わせていた。四の君に対しては中納言への満たされぬ思いからか愛情深く接していた。

乳母の家に身をひそめていると、そこにまで宰相がたずねてきて中納言に女装にもどるようにすすめたが、簡単にはもどれないことを嘆いていた。

宰相の頼みはなかなかかなえられずいつもよりも長く乳母の家に籠もっていたので右大臣と四の君から心配の手紙がくる。中納言は四の君からの手紙に真剣になる宰相に不信感をつのらせるが、本人は中納言と逢えたよろこびで舞い上がり、中納言が右大臣邸に帰ろうとするのをとめようとまでしている。

四の君が妊娠し、それに続いて中納言も自分の妊娠に気が付く。宰相に相談したところ女装にもどり自分と一緒に暮らすことを強くすすめられる。それをしかたのないことだとあきらめていたが、宰相が自分を手に入れた気でおり、心配して四の君のほうに目を向けだしたことに気が付いた中納言はその不信感からか死をも考えてしまう。

十二月に中納言は左大臣のもとに参上するが、我が子のそのやつれた様子に左大臣は驚きを隠せない。父を心配させまいととりつくろって食事などをとる中納言。心配はするが、その心中までは見抜けずよろこんで一緒に食事をとる左大臣の母上のほうはというと、そんなことには全く神経が働かず気にもとめていない。

年も改まってしまったので、世を去る覚悟を決めた中納言は、身なりを整えて身のこなしなどにも心を配るようになった。内裏に参上したその姿は人目を引き、宰相は「今更女の姿に身を変えにくいのでは」と心配になる。中納言が何に対しても誠実に勤める一方で、帝が他の誰よりも中納言の発言を重用するので、中納言の評判は世の極みに達していた。

その年の三月一日頃、桜の花を観賞する宴が催された。当日、勅題をいただいての詩作で、中納言の作品は他に並ぶものがないほどの出来栄えだった。中納言の立派な姿に左大臣は「このままでも立派にやっていけるに違いない」と考える。日暮れに管絃の遊びが始まると、中納言は「二度と吹くことがあろうか」と笛を吹いた。その音色は言葉に表せないほどすばらしく、帝もたいそう満足して中納言は右大将の宣旨を受けた。一方で宰相も並みの人より優れているので、権中納言にとりたてた。右大将は「こんなに栄達する身なのに姿を消してしまうとは」と密かに嘆いていたが、権中納言は昇進の喜びもさて置き右大将の事が気にかかり、「あと少しで自分のものになる」と心を慰めていた。

右大将は体が窮屈になるにつれ、心細い思いで宮中で宿直がちに過ごしていたが、権中納言も参内してきたので、休憩所で話をすることになった。そのとき、右大将は権中納言が四の君からの文を持っているのを見咎める。そこには右大将の昇進よりも権中納言の昇進を喜ぶ内容の歌が書かれていた。右大将は心の中で「四の君は世間に疎いようでありながらこんな方だった」と思うが、自分の内心を四の君には少しも見せなかった。

この月だけはこうしていようとの思いから、右大将は左大臣邸に日参し、内裏の宿直を熱心に勤めた。宿直の夜、五節の頃に歌を詠みかけてきた人を思い出し、麗景殿の辺りでこっそりと下の句を吟詠すると、あの時の人が答えた。その心を嬉しく思い、右大将はそこで一夜を過ごす。

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