学部長メッセージ

法学部長 長谷川 裕寿

長谷川 裕寿

 法学部で法律を学ぶ以上、「良き法律家」を目指すのは、ごく自然かもしれません。しかし、「良き法律家は、悪しき隣人」という法諺(ほうげん-法的なことわざ)があるのを知っていますか。これは、法的な知識を振りかざして、人情や社会常識を全くかえりみない行動をとる法律家を批判する警句です。法を学ぶことが、この意味での「良き法律家」を目指すものであってはなりません。人情や社会常識が、往々にして多数派の一般意志であることに注意を払いつつも、法が私たちの社会生活を円滑に送るための知恵であることを忘れてはなりません。そのためにも、私たちの先人が長いときをかけて培ってきた知恵(法)を学び取ろうとする姿勢がまずは大切です。しかしながら、現在は(そして未来も)単なる過去(及び現在)のコピーではありません。単に過去の法的知識を、先人が残してくれた知恵だという理由だけで、後生大事に堅持しているだけでは、およそ円滑な社会生活を送るには不十分です。

 

 現代社会は、過去に例をみないほど、高度に、そして急速に技術が進歩しています。私たちの身の回りでもインターネットやSNSはすでに不可欠の生活インフラとなり、近時はAI(人工知能)が多用される時代となっています。こうした社会においては、プライバシーや個人情報をどのように保護すべきかという問題にとどまりません。人工知能ロボットの導入によって労働環境が変化する兆しを見せ、人間の存在意義そのものを問われる事態となっています。国際社会に目を転じてみても、世界の国々は、ますます政治的にも経済的にも緊密に結びついています。アメリカ合衆国ではトランプ大統領が登場したことで、合衆国の政策も大きく変化し、国際社会にも重大な影響を及ぼしています。もちろん日本も例外ではありません。経済格差、環境政策、安全保障などは、もはや一国で対処できるような問題ではなく、国際社会が協力して、新たな知恵を構築しなければならないものであることを、私たちに強く意識させてくれます。

 温故知新。「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」。先人の知恵に学びながら、新たな道理や知識を見い出して、自分のものとしていく(実践する)。法を学ぶことは、法律の条文を暗記することではありません。条文に示される、紛争解決の知恵の由来や意味を理解し、現代社会の実情に合わせてその知恵を応用できる力を身に付けることです。それはまた紛争を未然に防止する知恵を身につけるということでもあります。皆さんが、大学を卒業し、巣立っていく社会には、たくさんの希望と共にたくさんの困難も待ち構えていることでしょう。私たちは、大学で身に付けた力に磨きをかけ、困難を乗り越える中で、夢を実現していってほしいと願っています。

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