法学部

11.06.17

リレー連載(Vol.20)「震災と政治(2)阪神・淡路大震災と政治」(成田憲彦教授)

法学部専任教員によるリレー連載、第20弾は成田憲彦教授です。

「震災と政治(2)阪神・淡路大震災と政治」


駿河台大学法学部 成田 憲彦

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 阪神・淡路大震災は、1995年(平成7年)1月17日午前5時46分に淡路島北部を震源として発生したマグニチュード7.2、最大震度7の内陸直下型の地震によってもたらされました。死者6,434名、行方不明者3名、負傷者43,792名(消防庁調べ)、避難者は31万人にのぼり、当時として戦後最大の自然災害でした。死者の7割以上が圧死・窒息死で、戦災にあわなかった古い木造住宅に居住する高齢者が多かったとされます。住宅の全壊が約10万5,000棟、半壊が約14万4,000棟のほか、山陽新幹線の高架橋等の倒壊・落橋のほか港湾埠頭の沈下、高速道路や上水道、電気・ガス電話・ケーブルなど、インフラやライフラインの被害の甚大さも特徴で、典型的な現代の都市型災害です。

 当時の内閣は、社会党の村山富市首相を自民党と新党さきがけが支える自社さ連立政権でした。自民党は1955年のいわゆる保守合同で結成されて以来、長らく政権を独占し、野党第一党の社会党と対立してきました。1993年に自民党の分裂により、38年ぶりの非自民連立政権ができましたが、政権内の対立から社会党と新党さきがけが自民党と組んで結成されたのが、村山内閣でした。

 この震災では、政府の初動対応が遅れたことが問題視されました。早朝だったうえに、気象庁の震度計の故障や通信系の寸断などで、情報がうまく伝わらなかったのです。最も早く状況を伝えたのは、テレビのヘリコプターからの映像で、大きな被害が出ていることが予想されましたが、全体像や正確な情報の伝達は遅れました。村山首相は、6時のテレビのニュースで震災の発生を知りますが、何時間も情報が入らないままでした。

 10時過ぎからの定例閣議で、国土庁長官を長とする非常災害対策本部が設置されました。災害対策基本法では、災害のときは国務大臣を長とする非常災害対策本部を、また著しく異常かつ激甚な非常災害の場合には首相を長とする緊急災害対策本部を設置することができるとなっています。この日設置したのが非常災害対策本部だったのは、震災の規模の情報が的確に中央に伝わっていなかったからです。実際、直後の国土庁長官の記者会見の配布資料では、死者は1名でした。このような事態に対する反省と、同年3月に起きたオウム真理教による地下鉄サリン事件の教訓から、その後内閣官房の内閣情報調査室内に情報の集約のための内閣情報集約センターが、また官邸に危機管理のための内閣の指揮所として官邸危機管理センターが設置されました。現在危機管理センターは、首相官邸の地下にあり、オペレーションルームを備え、24時間体制で危機管理に備えています。

 20日に首相は、北海道・沖縄開発庁長官であった小里貞利氏を災害対策担当大臣と非常災害対策本部長に任命しました。本来は国土庁長官の仕事ですが、同長官は自民党の派閥順送りで大臣になった人で、一番仕事が少なくて済む国土庁長官にしたのに、大震災になったので急遽変えたと言われました。小里担当大臣は、被災地で精力的に陣頭指揮を取りました。この点については、主たる被災県が兵庫県に限られたことで、今回の東日本大震災よりやりやすかったといわれます。

 政府は1ヶ月後の2月17日に政令で首相の諮問機関として国土計画の専門家である元国土庁次官の下河辺淳氏を委員長とする阪神・淡路復興委員会を設置し、2月24日には、「阪神・淡路大震災復興基本法」を制定し、首相を本部長とする阪神・淡路復興対策本部を設置しました。同本部は、復興委員会の意見を踏まえ、復興のための施策の総合調整を行い、財政面では最終的に約3兆4千億円の国費が投入されました。また制度的な問題点の解決のために、災害対策基本法の改正がなされたほか、被災者の生活の再建支援のために、3年余りかけて地元出身議員を中心に議員立法で被災者生活再建支援法が制定されました。政治のことではありませんが、震災後の支援のため全国からボランティアが集まり、この年がボランティア元年と呼ばれるきっかけともなりました。

〈主要参考文献〉

 内閣府『阪神・淡路大震災教訓情報資料集』

 第19回 「情報法は決して目新しい学問ではない」(辻 雄一郎准教授)
 第18回 「震災と政治(1)関東大震災と政治」(成田憲彦教授)
 第17回 「株式会社の暴走をいかに防止するか?」(菊田秀雄准教授)
 第16回 「成人年齢の引き下げ(18歳成人)と民法(1)」(上河内 千香子准教授)
 第15回 「『デジタル人間』と『生身の人間』-あなたの個人情報はこう使われていた」(宮下紘准教授)
 第14回 「インサイダー取引禁止はどのような者におよぶか?」(王子田 誠教授)
 第13回 「鉄の時代を生き抜く―文学だって面白い」(海老澤 豊教授)
 第12回 「裁判員制度について」(堀田周吾准教授)
 第11回 「法律は「弱者」を守れないのか?」(草地未紀講師)
 第10回 「イマヌエル・カント」(福田二郎教授)
 第9回 「「本の王国」とブックタウン運動」(熊田俊郎教授)
 第8回 「「フレセキュリティ」(flexicurity)と「フレシキュオリティ」(flexsecquality)」(石田信平講師)
 第7回 「時効とは?」(竹内俊雄教授)
 第6回 「刑事政策について」(米山哲夫教授)
 第5回 「鳩山新政権と政治学」(西川敏之教授)
 第4回 「証明責任・証明妨害 ― 神判に起源?」(太田幸夫教授)
 第3回 「経済に関する法の直面している問題」(大録英一教授)  
 第2回 「私の憲法研究」(「北原仁教授)
 第1回 「子ども虐待の防止――私たちにできること」(吉田恒雄教授)


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