11.05.12
講義の一風景(vol.17)「捕鯨活動は合法か?−−国際法の観点から−−」‐長岡 さくら講師‐

近年、1月から2月にかけて南極海域において日本政府からの委託事業として行われている調査捕鯨活動に対する「シー・シェパード」や「グリーンピース」といった環境保護団体からの妨害行為について、ニュースや新聞報道で耳にすることが多くなっています。とりわけ、2010/11年漁期については、妨害行為が激しく乗組員の生命・財産及び船舶の安全が確保されないとして、日本政府は、本漁期の調査捕鯨活動の切り上げを発表するに至りました。
「シー・シェパード」などの環境保護団体や一部の反捕鯨国は、日本の行っている調査捕鯨活動に対して様々な非難を行っていますが、その中の一つには「鯨を食べるのはかわいそうだ」「鯨のように知能の高い動物を殺すのは残酷だ」という主張があります。本当に、鯨を食べることは残酷な行為と言えるのでしょうか?
世界には多くの食文化があります。例えば、牛を聖なるものとして食べない国もあれば、豚を不浄なものとして食べない国もあります。また、鹿やうさぎを食べる国もあれば、犬や猿やカンガルーを食べる国もあります。世界には様々な食文化があり、それぞれがその地域にとって伝統でありそれぞれが尊重されるべきものではないでしょうか。にもかかわらず、日本の鯨食文化はなぜ非難されなければならないのでしょうか。捕鯨活動の何が問題とされているのでしょうか。日本の調査捕鯨活動は国際社会の中で法的に許されないことなのでしょうか?
鯨類の保護に関しては、1948年に発効した国際捕鯨取締条約(ICRW)に基づいて設立された「国際捕鯨委員会(IWC)」という国際機構があります。当初、IWCは捕鯨国を中心として構成され、鯨族の適切な保存を図り捕鯨産業の秩序ある発展を可能にすることを目的として活動していました。ところが、1970年代以降、捕鯨を行わない加盟国が増加したことと反捕鯨運動の機運の高まりを受け、IWCではサンクチュアリ(鯨保護区)の設定や商業捕鯨モラトリアム(一時停止)の採択を行うようになり、捕鯨活動を大幅に制限するようになりました。
さて、このようなIWCの動きは捕鯨活動や鯨食文化を違法なものとしたのでしょうか。いいえ、違います。
国際社会を規律している国際法の世界では、自国が納得できない国際法規範には「入らない」自由があり、「ノー」と言う自由があります。つまり、原則として、国家は自国が合意・同意した国際法規範にのみ拘束されています。言い換えると、「合意は拘束する」という大原則のもとに動いています。
確かに、IWCは捕鯨活動を制限してきています。これに対して、日本政府は、一部のサンクチュアリに対して異議申立を行い現在も撤回していません。つまり、日本政府はこれらのサンクチュアリには合意も同意もしていません。そして、国際社会の原則に従って考えると、そのようなサンクチュアリには日本は拘束されず、日本はそのサンクチュアリにおいて自由に捕鯨活動を行うこともできます。一方、商業捕鯨モラトリアムについては、IWCでの採択の数年後に同意したため、これに拘束され、現在は一部の大型鯨の商業捕鯨を行うことはできません。しかし、IWCでは全ての捕鯨活動を完全に禁止している訳ではありません。IWCの設立基本文書であるICRWでは締約国政府による調査捕鯨活動が認められており、日本政府は、この規定に基づいて南極海域において調査捕鯨活動を現在も続けています。
これに対して、反捕鯨国として知られる一部の国々は、IWCの下で許されている調査捕鯨活動を国際法上違法な「商業捕鯨である」と断じ非難しています。そして、昨(2010)年5月30日には、オーストラリアが日本を相手取って、この問題を国家間の紛争を取扱う国際司法裁判所(ICJ、オランダのハーグに所在します。)に対し提起しました。
さて、日本の調査捕鯨活動は国際社会の中で法的に許されないことなのでしょうか?そして、本当に、鯨を食べることは残酷な行為と言えるのでしょうか?
みなさんもご一緒にこの問題について考えてみませんか。
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