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09.08.09

【法学部】リレー連載(Vol.2)「私の憲法研究」(北原仁教授)

 法学部専任教員によるリレー連載、第2弾は北原仁教授です。

 ※吉田恒雄教授による第1弾「子ども虐待の防止――私たちにできること」はこちら


「私の憲法研究」

駿河台大学法学部 北原 仁

 憲法に基づいて政治を行おうという立憲主義は、西ヨーロッパで誕生したものです。この立憲主義を具体化する最も重要な機関が議会です。では、どのように議会が生まれたのかについては、これまで様々な説明がなされてきましたが、最近の考え方の中には、議会制度は副産物だと主張するものがあります。この考え方は、一見奇妙に思われるかもしれませんが、傾聴すべきものを含んでいます。

 西ヨーロッパは、中世末期から戦争が絶えませんでした。絶え間ない戦争は、武器と戦争技術の発達を促しました。これは、軍事革命と呼ばれています。軍事革命は、戦費の膨張を引き起こします。西ヨーロッパ諸国は、この戦費を賄う方法を工夫しなければなりませんでした。その工夫の一つが身分制議会を設けることでしたが、議会は、補助金と引き替えに国王に苦情を突きつけ、国政の改善を求めます。フランスでは、この議会を全国三部会と呼んでいましたが、国王は、苦情を申し立てる手強いこの議会を開催せずに、徴税を業者に委託し、官職を裕福な商人にかってもらうという売官制度によって租税を徴収しようとしました。これに対して、イギリス国王は、議会制度を維持せざるをえず、議会は、イギリスの内乱と名誉革命を経てますます力を強めていきました。その過程で、権利請願や権利章典などによって国民の権利も保障されていきました。このような立憲主義の発達過程を研究していますが、大きなテーマなので未だに研究中ですが、なんとか結論を出したいと奮闘しています。

 一方で、この西ヨーロッパに生まれた立憲主義は、18世紀になると、アメリカ大陸に拡大します。まず、アメリカ合衆国がイギリスから独立して、アメリカ合衆国憲法を制定しました。この憲法は、現在でも使われています。メキシコから南のラテン・アメリカ諸国は、だいたいは19世紀初めにスペインから独立しますが、それらの国々の憲法は、アメリカだけでなくフランスやスペインの憲法の影響を受けています。これらの国々は、日本の明治憲法よりも、半世紀ほど早く制定されています。したがって、ラテン・アメリカ諸国にも、人権を救済する仕組みのアムパーロという優れた憲法制度も発達しました(この制度については、衆議院憲法調査会の依頼により報告書を作成したことがあります)。しかし、政情は、今日でも安定しているとはいえません。日本の立憲政治の開始は、歴史的に見ると決して早いとはいえませんが、ラテン・アメリカ諸国よりも安定しているといえます。その理由を考える上で、欧米以外の国々の憲法の歴史も重要だと考えて、研究しています。

 ラテン・アメリカ諸国の憲法と日本の立憲主義とは、直接関係がないように思われます。しかしながら、ラテン・アメリカ諸国と日本は、アメリカに対する関係においては共通するところがあります。

 アメリカ合衆国の始まりは、東部の13州であることはよく知られています。しかし、今日では、アメリカ合衆国は、50州によって構成されています。合衆国は、西部へ西部へと拡大していき、メキシコとの戦争では、カリフォルニアなどのメキシコ北部を手に入れ、ついには、ハワイまで併合するにいたりました。1898年には、アメリカは、スペインと戦争をしてプエルトリコ、キューバ、フィリピンなどの旧スペイン植民地を占領しました。キューバは、アメリカ合衆国の独立の時から併合すべきだという意見がありましたが、アメリカ占領後の選挙で独立派が多数派となり、合衆国への併合は拒否されました。プエルトリコは、未だに自治で満足している現状支持派、独立国になるべきだという独立派、合衆国の一州になるべきだとう併合派に分かれています(現状支持派が多数派です)。フィリピンは、第二次世界大戦後、結局独立しました。これらのいずれの国も、アメリカ合衆国が憲法を制定しました。つまり、アメリカの手になる憲法をもつという点で、日本との共通点が見いだせるのです。

 日本の憲法学は、欧米の憲法理論を学び、それを日本に適用しようとすることに熱心でした。しかし、日本の歴史的背景は、欧米とは大きく異なります。日本の立憲主義は、欧米の立憲主義だけでなく、広く世界の国々の立憲主義を確立しようとする努力にも目を配るべきだと思います。ラテン・アメリカやアジアなどの憲法の歴史に照らしてみれば、逆に日本の憲法の特質も浮かび上がってくるのではないかと考えています。そして、日本から日本の立憲主義について広く世界に発信する必要があります。その点でも、微力ながらなにかできないかと考えています。

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