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2017.11.20

[外から見た日本:その6] OB鈴木達仁さん

OB 鈴木達仁さん(2007年度卒業)

I.ドイツに興味を持つきっかけから現地での生活を始めるまで

 子どものころから海外に行きたかった。もともと映画が好きで小さいときからよく見ていた。ドイツ映画を見たのは、小学2年生のとき。夜中にやっている映画番組(ミッドナイトシアター)でドイツ映画の「Uボート」を見た。暗い映画だなとは思った――ドイツでは戦争の話など、このような映画が多い――が、独特なアングルや技法が使われており、それがきっかけでドイツに興味を持つようになった。
 
 大学は留学制度で選んだ。駿河台大学はミュンヘン大学に行きやすいと思った。当時はまだ、ミュンヘン大学への日本人の交換留学生は年間で10人くらいしかおらず、少なかった。一般留学生もいたがこちらも多くはなかった。
 
 大学2年生のとき(2005年)に短期留学でウィーンへ行った。その後、3年生(2006年)になって1年間ミュンヘンへ留学した。大学期間は今でこそ日本と同じ4年間になっているが、当時のドイツの大学期間は日本より長かった。
 
 留学を終え日本に帰ってきてから感じたのは、「この国は疲れる」ということだった。人も多いし、なにより個性が活かしにくい社会だと思った。留学前からいつも感じていたのだが、帰ってきてから余計そう感じるようになった。「自分にはここは合わない。そのうちドイツへ戻ろう」と考えていた。
 
 留学から帰ってきたのは3年生の3月末。もともとドイツに戻るつもりでいたので、就職活動に前向きになれなかった。そのため、内定が出たのは4年生の11月くらいだった。そのときも、3年間くらい働いたらドイツへ戻ろうと思っていた。しかし、1年半くらいで耐えられなくなりやめた。やめる前からちょこちょこドイツでの職を探していたが、やめてから本格的に探し始めた。行ってしまってから探すという方法もありだとは思ったが、日本にいるときにインターネットを使ってドイツの職探しをした。2009年の夏に再びドイツへ。その後、ドイツでも一度引っ越しをして今に至っている。ドイツで生活を始めて、今年2017年で丸8年となり9年目に入る。

II.ドイツと日本

 留学していた1年間、ドイツはとてもいいところだった。留学から帰ってきても、「また、行こう」ではなく「戻ろう」と思うくらいに。しかし、実際に長く生活してみるといいところだけではなく、悪いところも見えてくるようになった。留学中はドイツのいいところばかりが見えていたのだ。
 
 まず、ドイツはサービスという考えが希薄のようだ。日本で普通に行われることが行われない。日本では宅配便は2、3日で届くし、早ければ翌日に届く。遅れることになると連絡も来る。しかし、ドイツでは送ってから送り先に届くのが2週間後ということはざらにあり、1か月後であることもある。以前、荷物をなくされたことがあるが謝罪の言葉もなかった。別に日本ほどの細やかなサービスは求めていない、ただ料金を払っているのだからその内容は責任を持って完遂してほしいだけだ。宅配便だけでなく、それ以外でも「情報共有」という感覚が希薄なため、頼まれたことは頼まれた人しかわからない。ほかの人からは「担当じゃないのでわかりません」と言われる。自己主張が強く他人のことをあまり気にしない。高級なホテルやレストラン、または小さな田舎町などではこのようなことはないが、一般的にはこんな感じである。都市部でありながらだいぶ違うなと感じたのはオーストリアのウィーン。オーストリアは観光大国なので、ドイツよりサービス等が洗練されている。裏表が激しくない。
 
 ただ、日本でのサービスは少し行き過ぎであると思う。電車が1、2分遅れているだけでも謝る。これは過剰だと思う。更に最近の日本はより一層他人の行動に対して敏感になっていると思う。「除夜の鐘がうるさい」と苦情が来たらやめてしまう寺も寺だが、そもそも年に一度の日本の習慣・文化に対して苦情を出す方が寛容さが足りないと思う。
 
 ドイツでは日曜日には一部のカフェやレストランを除きお店は開いていない。そのため、日本に一時帰国中も日曜日になると買い物をしなくてはと焦ってしまう。
 
 ドイツ人は良くも悪くも他人に対してドライである。しかし、エレベーターで一緒になった人など知らない人に対しても気軽に挨拶をする。日本人は知らない人に対して特に挨拶をしない。しかし、自分に関わりのない人に対して干渉したがる傾向にある。だからネットなどでも炎上が起こる。自分と違う意見の人を受け入れにくい。違う意見を言われると自分が攻撃されていると思うためだろう。意見を言う際、日本人は感情的になりやすいところがある。そのためディベートが下手である。論理的思考に基づいて、冷静に対応することができない。
 
 日本はやってはいけないことを多く教える教育をする。そのためか、日本人は常に何かにおびえて生きているように感じる。人に対しても社会に対しても。ドイツでは法律を犯さなければ他は個人の裁量に任されている。その為、「暗黙の了解」といったグレーゾーンは少ない。明解でとてもいいと思う。

III.ドイツの進路と仕事

 ドイツでは大学に行ける人は限られている。10歳のとき(日本での小学4年生)には大きく大学コースに行くか、職業コースに行くかの選択がある。途中で変更もできるが厳しい。特に職業コースに行った人が大学コースへ変更するのはとても難しい。また、大学コースに行ってもアビトゥーアという試験(高校卒業試験=大学入学許可)に合格しなければいけない。大学へ入ったとしても卒業できるとは限らない。卒業できるのは実は3~4割くらいの人だけで、ほかの人は途中で専門や就職学校に行ってしまう。
 
 ドイツ人は「やりたいときにやりたいことをやる」というスタンスで、決まった時期に集団で就職活動をするといったことはない。そもそも企業側に採用活動の時期というものがない。だから、就職時期というのは決まっていない。中途も新卒も分かれておらず、仕事ができる人が求められる。そもそも新卒という概念が日本独特の習慣で時代に合っていないと思う。仕事着もスーツとは決まっておらず、基本は私服である。取引などのときだけスーツを着用する。
 
 法律で決まっている最低有休日数はフルタイムの場合は年間最低24日間。しかし、それは少ない方で多くの人がそれ以上の日数を付与されていたり、繰り越しがあったりする。休暇も2~3週間というのは普通。人によっては1か月ということもある。また、残業がある状態が長く続く場合は、職場改善が求められる。人を雇ったり委託をしたりする。残業がある状態が長く続くというのは、それ自体がおかしいという考え方である。
 
 ヨーロッパでは職人などの専門職というのは誇りであり、国で保護されている。ドイツにはマイスター制度というものがあり、仕事を安請合いしない。国民がそれを認めているし、それに誇りを持っている。煙突掃除人は国家資格であるが、基本はガスメーターのチェックというようなこともある。ドイツではブタと煙突掃除人は幸運の証とされる。
 
 日本では職人が減っている。外部に委託したり、海外生産したりしてしまう。職人がいないことで国力も低下していくと思う。
 
 最近日本では、休暇も多く労働時間の少ないドイツを称賛する記事やメディアを多々見かけるようになった。だが、事実はそれだけで一概に言えるものではない。それらのメディアの大半にはドイツの悪い部分がほとんど書かれていない。ドイツの労働環境は、いまだに労働環境に大きな不満が出るような日本のそれと比べ被雇用者にとって非常に恵まれたものになっているのは明らかだが、一方では自分が任されたもの以外について把握していなかったり、大事な宅配便を失くしても責任を負わないような社会でもある。そうしたいい加減な仕事の上にドイツの恵まれた労働環境は成り立っている。もし、そうしたアバウトな仕事に対して立腹しない日本人がいるなら是非ドイツを称賛していただきたい。しかし、洗練されたサービスに慣れた大半の日本人の場合はそうではないと思う。
 
 色々とあるが個人的にはドイツの文化や言葉、労働環境は好きである。

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中央が鈴木達仁さん


書き手:安養彩花

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