教職課程委員会とその取組

教職課程委員会

教職課程を運営する全学組織として教職課程委員会が設置され、全学の教職課程運営の中核組織として機能しています。その構成者である教職課程委員は、原則として、教科に関する科目や教職に関する科目を担当する専任教員で、各学科から2~3名の教員が選出されています。

教職課程委員会は、おおむね月1回の割合で開かれ、合議によって教職課程業務を掌るとともに、教職課程を履修する学生指導に関する全般的及び個別的な指導の在り方について検討を行い、個々の業務を担当する教員が綿密な学生指導を行えるようにしています。

本学の教職課程では、学年担当制が確立しており、教職課程委員のうち、2名が主に中学校・高等学校保健体育科の免許状の取得をめざす学生の指導を、3名が中学校社会科、高等学校地理歴史科及び公民科、中学校・高等学校英語科、高等学校情報科の免許状の取得をめざす学生の指導を担っています。これらの教員が4年間にわたって同一学年を担当することによって、教員と学生との間に緊密なつながりが生まれ、責任ある指導と自律的な活動の両立が図られています。

他方、学年を担当しない委員は、学科の教職課程を履修する学生の相談や支援、学科の履修条件の整備を行うとともに、学年担当教員と協力して、全学科の学生が地域の学校において教育実習や学校ボランティア活動を行えるように、教育委員会や学校との連携業務を担っています。

また、教職課程の運営は、全学及び学部レベルの教務と緊密に連携する必要があるため、教職課程委員会の委員長を務める教職課程主任が全学教務委員会に加わり、教職課程委員の半数が学部の教務委員を兼ねています。このような委員配置により、全学教務委員会及び学部教務委員会との有機的な連携の下で、教職課程のカリキュラムや時間割の編成についても、教職課程委員会が責任をもって行っています。

さらに、教職課程の設置が学科単位で認可されている趣旨からして、教職課程運営を効果的に進めていくためには、各学科の専任教員全員の理解と協力が不可欠です。

たとえば、本学では、教育実習を行う学生のFA(ファカルティ・アドバイサー)でもあるゼミの専任教員が教育実習校訪問を担当する体制が整っています。開学以来、教育実習校訪問は、教育実習校との意見交換を行って教育実習の在り方を改善していくためにも、また、教育実習の事後指導を適切に行っていくためにも重要であるとの認識に基づいて、全教育実習校訪問が実践されてきました。このようなところにも本学の教育理念である「愛情教育」の実践的な姿が現われていると言えるでしょう。

教職課程ガイダンス

教職課程委員会は、年度当初の教職指導として、毎年3月末から4月第一週にかけて教職課程ガイダンスを行っています。学年別の教職課程ガイダンスが教職課程ガイダンスの基本となり、新規教職課程ガイダンス、2年次生教職課程ガイダンス、3年次生教職課程ガイダンス、4年次生教職課程ガイダンスがあります。新規教職課程ガイダンスは、1年次生と2年次生以上の学生で初めて教職課程を履修する学生を対象としています。

学年別の教職課程ガイダンスは、学生が当該年度の教職課程を履修する際に特に重要な事項を中心に構成されています。このように、教職課程においても、本学の「愛情教育」の理念に基づいてきめ細やかな指導場面を設定しています。

学年別ガイダンスの他には、他学科履修を考えている学生のための教職課程ガイダンス、編入学生で教職課程を履修しようと考えている学生のための教職課程ガイダンス、科目等履修生として教職課程科目の取得をめざしている学生のための教職課程ガイダンスがあります。

すべての教職課程ガイダンスの終了後、学生の履修相談の時間を設け、教職課程委員が分担して質問や疑問のある学生に対応しています。

教職課程委員会は、教職課程ガイダンスを、年度始めに学生と出会う指導場面として、学生が当該年度の教職課程履修計画を作成するのに必要な情報を入手する場面として大切にしています。

教員養成の質の向上のための取組(概要)

学校ボランティア

本学教職課程における学校ボランティアの本格的な実施は、2002年、飯能市立原市場中学校より総合学習への協力依頼があり、教職課程委員3名のサポート体制を整えて、4年生17名、3年生8名が、17名の中学生の卒論指導に協力したことから始まります。

「2002年度学校ボランティア実施要領」には、「原市場中学校より『総合学習』の一環として3年生全員が『卒論』を執筆することになり、その支援活動として教職課程履修者(教育実習経験者)の協力を得られないかとの問い合わせがあった。教職課程主任としては、今回の原市場中学校の『卒論指導』への支援活動を学校ボランティアの在り方を検討するための先導的経験として位置づけ、原市場中学校からの要請を前向きに受けることとした。」と記されています。

こうして、原市場中学校生徒の卒論作成のための相談会は、本学において、同年10月から12月にかけて3回(1回につき3時間)実施されました。

2003年12月には、駿河台大学と飯能市教育委員会との間で、学校ボランティアの実施に関する覚え書きが交わされ、2004年度より教職課程履修生による学校ボランティアが続けられていいます。

学校ボランティアの内容は、教科指導の支援、総合学習支援、夏期休業中の学習支援・部活動の支援、児童会・生徒会活動の支援、学校行事の支援、クラブ・部活動の支援、介助を必要とする子どもの支援、児童・生徒の遊び相手・話し相手などです。

飯能市教育委員会との連携については、教職課程委員会の当該年度学校ボランティア担当教員が、学校ボランティア登録ガイダンスのあと、登録者名簿を作成し、飯能市教育委員会に名簿を送付し、飯能市教育委員会が各学校に名簿を渡すことになっています。学校長が学校ボランティアの派遣を要請する場合、従来は学校ボランティア担当教員に直接依頼していたのですが、2013年度からは、本学のボランティア活動支援室の事務を所掌する学生支援課が学校ボランティアの依頼についても窓口となっています。

学生支援課から連絡を受けた学校ボランティア担当教員が、学生が事前に提出している「学校ボランティア計画書」を参考にして学生と連絡を取り合い、学校ボランティアの依頼内容を伝え、調整を行います。学校ボランティア終了後、学生は「学校ボランティア報告書」を担当教員に提出します。

教職課程委員会は、学生の資質を向上させるため、教員としての資質形成にとって学校ボランティアがどういう意味があるのかを考えてもらうために、「計画書」と「報告書」の作成を学生に求めています。学生自身が行為をはじめる前に考えること、行為を終えたあと振り返ることを重視するのは、介護等体験実習、課題発見実習、4年次の教育実習の場合も同様です。

前記「実施要領」において、「今後求められる教員の資質を身に付けていくための機会を整備する必要性を感じ、教職を目指している教職課程履修者のボランティア活動を促進するため、『学校ボランティア』の在り方を検討してきたところである。」と指摘されているように、本学教職課程では、早い段階から、教員としての資質形成のための取組として学校ボランティアを位置づけ、取り組んでいます。

なお、駿河台大学教職課程委員会と飯能市立小・中学校校長との情報交換会において、学校ボランティアを「単位」として認定しない方針を確認し、今日に及んでいます。

最新の学校ボランティアの状況については、年度末に公表予定の「2015年度報告」を参照してください。

介護等体験事前・事後指導

介護等体験特例法の成立により、「介護等の体験」が、1998年以降、中学校教諭免許状の取得要件となりましたが、本学では、介護等体験の実施前年度に『介護等体験記録簿?事前・事後指導の概要を含む?』を作成するとともに、介護等体験事前・事後指導を行ってきました。『記録簿』は埼玉県教育委員会にも持参しています。

事前指導は、介護等体験に派遣する前年の春学期に1回、秋学期に7回程度実施しています。春学期の事前指導は、教職課程新規履修登録終了後、速やかに実施し、秋学期の事前指導は、9月最終週から始めています。さらに、翌年の春学期に直前指導を1回実施しています。

事前指導の内容は、①介護等体験が教師教育においてもつ意義について、②事前指導計画について、③事務手続について(2回)、③特別支援学校と社会福祉施設で働いている方による講演会の実施(2回)、④介護等体験報告会、⑤介護等直前指導としています。

介護等体験報告会は、介護等体験を行った学生が全員集まって介護等体験を報告し合うものですが、この報告会には、次年度に介護等体験を行う学生も事前指導の一環として出席することになっています。介護等体験を終えた先輩学生の話や体験を聞くことは次年度に介護等体験を行う学生にとっても貴重な機会となっています。

教職課程委員会では、介護等体験施設が確定した段階で、特別支援学校と社会福祉施設についてそれぞれ「計画書」の作成を学生に求めています。また、介護等体験が終了した段階で特別支援学校と社会福祉施設についてそれぞれ「報告書」の提出を学生に求めています。当該年度の介護等体験担当教員は、「計画書」や「報告書」を検討し、必要がある場合、個別指導を行っています。このようにすることによって、介護等体験を個別体験で終わらせることなく、学生が主体的に教師としての資質を形成していくことと結びつけていけるようにしています。

課題発見実習

本学教職課程では、2002年度より課題発見実習の取組を行っています。課題発見実習とは、中学校教員免許状の取得をめざす学生を対象とし、3年次の秋学期に中学校において「一週間以上」の実習を行うものです。課題発見実習は、「観察」と「参加」を中心とする実習であり、実際の学校の中で生活し体験し、教員として求められる資質について考え、自分の適性や能力をどのように形成していくかを考える機会です。

4年次の教育実習と異なるところは、原則上、教壇実習を行わない点です。教壇実習を行わない理由は、教職課程のカリキュラム編成上、教科教育法の履修が3年次から始まるため、教育実習に必要な十分な知識が備わっていないとの判断によるものですが、教育実習校の指導担当の先生の判断と指導のもとで、教壇実習を体験する学生もおります。

課題発見実習を希望する2年生は、課題発見実習登録ガイダンスに出席し、所定の手続を経て、3年次の春学期の事前指導を受講する必要があります。事前指導担当教員は、当該学年を担当する教職課程委員です。

課題発見実習を始めたころ、たとえば「2002年度課題発見実習派遣者名簿」をみると、18名の学生が「課題発見実習派遣者名簿」に残りましたが、最終的には、10名の学生が課題発見実習を行っています。課題発見実習の辞退理由は、派遣要件未充足、留学の確定、進路変更などです。

課題発見実習校についてみると、5名が出身校で実習を行い、5名が飯能市立小・中学校(協力校)で実習を行っています。ここで注目すべきは、飯能市立小・中学校が課題発見実習生の受け入れに協力していることです。

現在までの課題発見実習生数は、5名から10名程度で推移しています。最新の状況については、年度末に公表予定の「2015年度報告」を参照してください。

「教育学演習」の開設

本学の教育理念である「愛情教育」の具体的側面を構成する「少人数制教育」は、学部学科だけではなく、教職課程においても実践されています。履修者数が50人を越えると予想される教職必修科目については、複数コマの開設を行っています。

教職課程のカリキュラムで特徴的なのは、「教科又は教職に関する科目」として「教育学演習」を複数コマ開設していることでしょう。法令上、「演習」の設置を求められているわけではないですが、本学の「愛情教育」の実践形態として、開学以来、学部学科に準じて演習が開設されています。

教育学演習は、教育観、学校観、子供観、教育方法観など、教師として求められる総合的な力量を培うための選択科目であると同時に、課題発見実習の事前指導を行う演習としても位置づけられており、その意味では、課題発見実習を希望する学生には必修科目となります。このように、教育学演習は、教職指導の具体的な場面の一つとして位置づけられています。

また、教員採用試験に合格した学生は、教育学演習の意義について、「教育に関することはもちろん、生きていくうえで大切なことが学べる演習です。この演習は、教育に関することや人間の生き方に関することなど様々なことを、みんなで楽しく対話しながら、自分の考えを伝えたり、他の人の意見を聞いたりすることができる演習です。自分で勉強するだけでは身につけることが難しい、対話能力も知らず知らずのうちに身につけることができます。」と述べています。

今日、授業におけるアクティブ・ラーニングの重要性が指摘されているところですが、少人数制の演習における汎用的能力の育成も引き続き重視していきたいと思います。

教職課程専任教員・非常勤講師懇談会

教職課程委員会は、毎年3月に教職課程の専任教員と教職課程の科目を担当している非常勤講師の先生との懇談会(正式名称は「教職課程教科会」)を行っています。

懇談会では、教職課程履修登録状況、教育実習派遣状況、免許状取得状況、教員就職状況などを説明するとともに、学生の能力向上や教職課程運営に関する情報交換を行い、非常勤講師の先生からの意見・要望を伺って、教育指導や教職課程運営の在り方の改善に役立てています。

今後は、ますます、懇談会のいわば教職FD(ファカルティ・ディベロップメント)としての側面を積極的に活用して、「授業アンケート」の結果分析などにより教職課程全体として授業内容・方法の改善について相互啓発を図っていくための機会としたいと考えています。

飯能市教育委員会及び飯能市立学校との連携

教職課程委員会は、飯能市教育委員会や飯能市立学校との間で、さまざまな活動を計画し実施しています。

すでにのべたように、飯能市教育委員会との間で「覚書」が交わされ、それに基づいて市内の小中学校に学校ボランティアを派遣しています。また、飯能市教育委員会や小中学校の依頼によって講師を派遣しています。他方、本学教職課程としては、学生が学校教育に関する実際的な見識を深めることができるように、教職実践演習のシラバスに基づいて特別講師の派遣を依頼したり、校長先生の許可のもとで市内の小中学校の授業を見学させていただいたりしています。また、教育実習指定協力校のみならず、市内の小中学校に教育実習生や課題発見実習生を受け入れていただいています。

このような活動を継続するためには、相互の理解が不可欠です。そのため、本学では、春学期には、教職課程委員が教育委員会及び各学校を訪問し、教育実習や学校ボランティアなどについて意見交換を行い、年度末には、教育委員会及び市内の小中学校の校長先生に来校していただいて、情報交換会を行っています。

情報交換会では、教職課程履修登録状況、教育実習派遣状況、免許状取得状況、教員就職状況、学校ボランティア派遣状況等について現状報告を行って、本学教職課程の実態を理解していただくとともに、本学の教職課程運営に関する意見・要望等を伺って、今後の教職課程の運営に活かしていくようにしています。

本学開学以来、情報交換会は続いてきましたが、教育環境の変化をふまえて、飯能市教育委員会及び市立学校との連携の在り方を多角的に構築していく必要があります。



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