11.01.28
法学部専任教員によるリレー連載、第16弾は上河内 千香子准教授です。2回にわけてお届けします。

私は、駿河台大学で「民法」という科目を担当しています。今日は、民法のトピックとして、成人年齢の引き下げと民法の関係についてお話ししましょう。みなさんご存じの通り、現在の日本では、成人年齢は20歳です。このことは、民法4条において「年齢20歳をもって、成年とする」と定められています。しかし、この規定は、将来、「18歳をもって成年とする」になる予定です。
事の経緯は次の通りです。5月18日に憲法改正手続きを定めた「国民投票法」という法律が施行されましたが、この法律では、憲法を改正するための国民投票の場合には、18歳以上に投票権がある、ということになっています。しかし、18歳以上に投票権があるのに、20歳まで未成年というのはおかしい、ということで、成人年齢を引き下げて18歳以上を成人としよう、ということになったわけです。
しかし、成人年齢を引き下げて18歳未満を未成年、18歳以上を成人、とすると、いろいろと難しい問題が生じます。例えば、民法では、未成年者は契約を結ぶときには親の同意を得なければならない(5条)となっており、18歳や19歳の人が一人で何か契約を結んだとしても、後から取り消すことができる、ということになっています。これは、このような年頃の人たちは社会経験がまだ豊富ではないので、契約を結ぶ際にはハンディーを認めてあげよう、という趣旨からそうなっているわけです。しかし、今後、成人年齢を引き下げて18歳以上を成人とすると、これらの年齢の人は、親の同意なしに契約を結ぶことができるという自由を得る反面、若気の至り?でよく考えずに契約を結んだとしても後で取り消せなくなるということになるわけです。つまり、今後は、高校を卒業したばかりの18歳、19歳の年齢の人達が、大人たちと対等な立場で契約を結んでいかなければならないことになります。場合によっては、悪徳商法にだまされて被害を被ることもあるかもしれません。
このように成人年齢の引き下げは、民法上の若者の権利に大きな影響を与えることになるわけです。成人年齢の引き下げがいつの時点から始まるのかは、今のところ未定です。18歳以上が成人であるということが、国のすみずみにまで周知徹底され、国民の意識が変わった段階で、国会の議決を経て決定される、ということになります。それまでに、学校教育などを通じて若者に自己の権利を自覚してもらう必要があると言われているのです。
(次回に続く)
第15回 「『デジタル人間』と『生身の人間』-あなたの個人情報はこう使われていた」(宮下紘准教授)
第14回 「インサイダー取引禁止はどのような者におよぶか?」(王子田 誠教授)
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第10回 「イマヌエル・カント」(福田二郎教授)
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第7回 「時効とは?」(竹内俊雄教授)
第6回 「刑事政策について」(米山哲夫教授)
第5回 「鳩山新政権と政治学」(西川敏之教授)
第4回 「証明責任・証明妨害 ― 神判に起源?」(太田幸夫教授)
第3回 「経済に関する法の直面している問題」(大録英一教授)
第2回 「私の憲法研究」(「北原仁教授)
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