10.09.29
講義の一風景(Vol.12)「契約と法」中谷 崇 講師
突然ですが、「契約」と聞かれてみなさんは何を連想するでしょうか。
日常的に「契約」なんて言葉は使わないでしょうし、もしかしたら、自分とは縁遠い世界のことのように思われるかもしれません。
たとえば、テレビドラマなどでは、商社マンが○○社との「契約」を取り付けた、なんて具合で使われたりしますしね。

ところが、実際は、私たちにとって「契約」はごく身近なものです。たとえば、通勤・通学のために電車やバスに乗る。お腹がすいたので、牛丼屋で牛丼を食べる。コンビニで雑誌や飲み物を買う。これらの行為は全て「契約」です。また、一人暮らしをしたことがない人はちょっと気づきにくいかもしれませんが、家庭で水道をひねったら水が出てくる。スイッチを押せば照明がつく。ガスコンロに火がつく。このように水道・電気・ガスが使えるのは、水道会社、電気会社、ガス会社とそれぞれ「契約」をしているからです。こんな風に、私たちは、意識的にせよ無意識的にせよ、日々「契約」と接しているのです。
クルマを買う、マンションを買う、一人暮らしのためにアパート借りる、なんていわれると、「あー、契約をしているな」と実感できるかもしれません。でも、コンビニで飲み物を買うのが「契約」なんていわれても「なんだかなぁ」と思うのが普通ではないでしょうか。なるほど。ごもっとも。でも、よく考えてみてください。たとえば、あなたがコンビニで飲み物の代金を払ったのに、店員がその飲み物を渡してくれなかったらどうしますか。「代金を支払ったのだから、飲み物を渡せ」と言いたいですよね。そして、これが不当なクレームだ、なんて誰も思いませんよね。それはなぜでしょう。ここには、「代金を払う代わりに飲み物を受け取る」という約束があると考えられるからです。こっちが約束を果たした以上は、相手にも約束を果たしてもらいたいですよね。
ここまで読んで、コンビニでモノを買うのも「契約」だってのはわかったけど、「契約」ってそんな簡単に成立するものなの?と疑問に思われた方もいるでしょう。ぶっちゃけ契約ってそんな簡単に成立するのです。契約書?そんなもの基本的にいりません。あなたがその飲み物を買いたいと思い、店員がそれを売りたいと思う。それが一致すれば契約は成立です。それが150円の飲み物であれ、150万円の腕時計であれ、異なるところはありません。要は、口約束でたいていの契約は成立してしまうのです。そしていったん契約が成立すると法的に契約に拘束されます。あなた自身が誰にも強制されず飲み物を買うことを望んだ(意欲した)以上守りなさいよ、ということです。これを、法律の用語で「私的自治」(privatautonomie(プリヴァートアオトノミー))とか「意思自治」(autonomie(オトノミ) de(ドゥ) la(ラ) volonté(ヴォロンテ))といいます(両者は若干意味合いが異なりますが)。または、法の格言で「合意は守られねばならない」(pacta(パクタ) sunt(スント) servanda(セルウァンダ))とも言われています。
「なんだ。やっぱり法律ってヤツは一般人の感覚から離れていやがる」なんてお定まりの文句を言って敬遠しないで、ちょっと勉強してみませんか。意外と面白い発見があるかもしれませんよ。 まぁ、発見がないならないで、肩の力を抜いて雑学でも学ぶつもりで。
