法学部

09.12.22

【法学部】リレー連載(Vol.5)「鳩山新政権と政治学」(西川敏之教授)

 法学部専任教員によるリレー連載、第5弾は西川敏之教授です。2009nishikawa.JPG

 

「鳩山新政権と政治学」

駿河台大学法学部 西川敏之

 今年の8月の総選挙で民主党が大勝し、9月には民主党を中心とする鳩山政権が誕生しました。鳩山新政権は、いろいろな面で、従来の自公政権(自民党・公明党の連立政権)とは違った目新しい政治手法を打ち出してきました。一つには、最近ニュースによく出てくる事業仕分けです。アメリカの政治学者、ハロルド・ラスウェルは、政治を「誰が、何を、いつ、どのように手に入れるか(Politics: Who Gets, What, When, How)」という問題だといっていますし、また、デイヴィッド・イーストンは、政治を「社会における価値の権威的配分(authoritative allocation of values for society)と定義付けています。事業仕分けは、限られた予算を、どのように国家のために、そして国民のために無駄なく役に立つように配分するかを決めることです。つまり、予算という限られた財源(価値)の配分を最終的に決定しようとするものです。その配分の過程で、ムダをできるだけ省いて、できるだけ国家や国民のためになるように配分しようとするものなのです。これこそ、まさに政治なのです。民主党は、事業仕分けに民間人の仕分け人も含めて、一般国民に分かりやすく透明なものにしようとしています。

 政治は、また政策を決定する過程だとも言われています。民主党は、選挙期間中にマニフェスト(政権公約)において、いろいろな新政策を提案しました。例えば、月額2万6千円の子ども手当てや高速道路の無料化です。こうした政策もこれから最終的に決定されるまでには、いろいろ紆余曲折があるでしょう。そこには、与野党間の駆け引き、利益団体、マスコミ、官僚、世論などの意見が複雑に絡み合って、最終的な政策決定に至るでしょう。政治学では、政策というものがどのように形成されるか、その過程をつぶさに研究する学問でもあるのです。
 
 また、鳩山政権になって、政治的リーダーシップスタイルが、今までの官僚主導から政治主導になったといわれています。今までのように霞ヶ関の官僚が政治家に対して絶大な影響力を持っていた時代から、政治家が官僚を抑えて政治家独自の方針を力強く押し出していくという政治スタイルです。ここでも若干の混乱は見られるものの着実にその方向に少しずつ進みつつあるようです。政策決定は政治家が、政策遂行は官僚という役割分担を導入しようとしています。政治学では、政治家がどのような政治的リーダーシップを発揮するのかも研究します。

 また、外交国際関係に目を転じてみますと、新政権になってから沖縄の普天間基地の移設問題が大きな焦点となっています。前政権のときに合意した名護市の辺野古に移転するのか、それとも県外や国外に移転するのか、また嘉手納基地と統合するのかまだ最終結論が出ていません。この点について、アメリカ政府は、前政権と合意した移設案の速やかな実施を求めていますが、鳩山政権とアメリカ側との間では、意見の食い違いが出てきています。また、連立政権内でも意見の統一ができてないようです。また、鳩山総理は、地球温暖化問題に関連して、就任後間もなくCO2を2020年までに1990年比で25%削減すると公言しましたが、そのロードマップは、まだ明らかではありません。また、アメリカとの同盟関係を維持しながらも、東アジアで台頭する「超大国中国」とどのように向き合っていくかも日本にとって大きな問題です。このような国際的な政治問題を扱うのが私の担当する国際関係論(国際政治学)なのです。

 また、選挙の時の有権者の投票行動や世論の動向を分析するのも政治学なのです。各国の政治システムを比較研究するのは、比較政治学といわれています。いろいろな政治体制や政治家の背後にある政治的な考え方を学ぶのが政治思想です。このように政治学にはいろいろな副次分野があります。政治をよく理解するためには、政治と密接に関連する歴史、社会、文化、経済などもよく勉強して幅広い視点を持つ必要があります。鳩山政権になって政治がますますおもしろくなってきましたね。

以 上

<バックナンバー> 

 第1回 「子ども虐待の防止――私たちにできること」(吉田恒雄教授)  
 第2回 「私の憲法研究」(「北原仁教授)  
 第3回 「経済に関する法の直面している問題」(大録英一教授)  
 第4回 「証明責任・証明妨害 ― 神判に起源?」(太田幸夫教授)


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